東京、トスカーナ、シチリアを経て福岡で店を開いた理由 ~福岡県福岡市 アンティカ・オステリア“トト”Vol.1

海も近く、温暖な気候の福岡は現在、住みたい都市として人気急上昇中だ。

質の高いレストランも多いこの街にありながら、福岡を代表するイタリアンレストランと言うと真っ先に挙がるのがこの店アンティカ・オステリア“トト”である。

トスカーナ、そしてシチリアで修行したイタリアを敬愛するシェフがつくった質実剛健な料理を求めて、地元のみならず全国各地から多くの人が訪れている。

 

—シェフの経歴を教えてください。

福岡の糸島出身で、大阪の調理学校を卒業した後、大阪のリーガロイヤルホテルで3年働き、その後東京へ行きました。そこで、西麻布の『ダノイ』で6年働きました。僕にとってダノイのシェフである小野(清彦)さんとの出会いが衝撃的で、小野さんのイタリア料理を食べてイタリアンのシェフになろうと決意したんです。

 

—そしてイタリアに行かれたんですね。

そうです。まずはトスカーナへ。ダノイはトスカーナ料理の店でしたし、小野さんも、事あるごとに「トスカーナではこうだから」と話をしてくださっていたので、正直知ってるつもりでいたんですよね。けれども、実際に現地に行ってみたら知らないことだらけでした。

味付けの濃さにびっくりしたり、塩気のないパンに閉口したり(笑)。でも、段々その味が感覚として身に付くようになっていくんですよね。テクニカルな面だけだったら、日本人の方が優れているかもしれないけど、やはり現地に行ったからこそ分かるよさみたいなものはありました。

 

—そこからシチリアへ。かなりの方向転換ですよね。

南に行こうと思ったんです。で、九州出身ということもあり、なんとなく島がいいかな、と。実際にシチリアでの生活はまたゼロからのスタートだったので、かなり大変でした。言葉も違うし、風土もまったく異なる場所だったので、まずは生活していくことに必死でした。

 

—福岡でご自身の店を開業されようと思った理由は?

最初は東京も考えていたんです。でも、実際にイタリアに行って、特にシチリアの人たちの強烈な郷土愛に衝撃を受けて。自分のところ以外はケチョンケチョンという(笑)。食文化についてもそうで、とにかく誇りを持ってるし、自慢してくる。偏愛とも言えるような愛し方に接して「こういうのっていいな」と思うようになったんです。

だから、「福岡、羨ましいね」って言ってもらえるようにしてみたいと思って、福岡に戻ることを決めました。

<Vol.2へ続く>

Text:Miki Ozawa

Photo:アンティカ・オステリア“トト”