オーギー・レンのクリスマス・ストーリー

オトコ映画論 #36

1995年のウェイン・ワン監督、ボール・オースター原作・脚本の『スモーク』(原題Smoke) のデジタルリマスター版が、12月17日より恵比寿ガーデンシネマで公開される。日本では今はなき日本ヘラルド映画配給で、製作はミラマックスだった。

(c) 1995 Miramax/N.D.F./Euro Space
(c) 1995 Miramax/N.D.F./Euro Space

アメリカ・日本・ドイツの合作映画であり、エグゼクティブプロデューサーに井関惺(さとし)さん、プロデューサーにユーロスペースの堀越謙三さんらが名を連ねている。ボール・オースター原作のニューヨーク・ブルックリンの人情噺を、日本の資本で作ったことが至極画期的だった。

この映画の登場人物たちはみんな、紙巻き煙草や葉巻をのべつ幕なしに喫っている。彼らにとって煙草を喫うのは、究極の「無駄な時間の過ごし方」なのだ。みんな、社交場のように煙草屋に集まっては、ニューヨーク・メッツの試合結果など、無味蒙昧な会話を楽しんでいる。

(c) 1995 Miramax/N.D.F./Euro Space
(c) 1995 Miramax/N.D.F./Euro Space

妻を亡くした作家ボール・ベンジャミン(ウィリアム・ハート) がブルックリンの場末の煙草屋で開巻劈頭に買うのが、シガリロ(極細な葉巻) のオランダ産ペンシルベニングだった。

(c) 1995 Miramax/N.D.F./Euro Space
(c) 1995 Miramax/N.D.F./Euro Space

また、主人公オーギー・レン(ハーヴェイ・カイテル)はキューバ産シガーのモンテクリストNo.1を闇取引してひと儲けを考えている(公開当時、アメリカとキューバは国交がなかったから、これはご禁制の品だった)。

(c) 1995 Miramax/N.D.F./Euro Space
(c) 1995 Miramax/N.D.F./Euro Space

結局、シガーは水浸しになってしまう。彼はまた、煙草屋の前の角を、定点観測のように、同じ場所で同じ時刻に撮影するのが15年間の日課になっている。ボールがオーギーの撮った古いアルバムをめくって、そこに亡き妻の姿を見つけるのは感動的だ。