デキる男は、良いサージを選ぶ目を養っているものだ!?

大西さんの著書にもサージに関する記述があり、それを要約すると以下のようになる。

「サージとギャバジンは共に2/2(にいにい。たて糸よこ糸とも2本飛んで2本もぐって織りが形成される)の綾織物であるが最も大きな違いはその綾目角度にある。

サージは綾目の角度が45度のものをいい、ギャバジンはおよそ65度が特徴である。つまりサージはたて糸とよこ糸の本数が同数であるから45度になり、このバランスが平均していることにより、丈夫さと耐久性に優れた織物となる。用途は学生服や軍服などの制服類。アイロンや摩擦によるてかりが起こりやすいのが、少ない欠点である。」

つまり、普及品のサージはユニフォームに最適な、安定感のある素材だという。

いっぽう海軍士官などのお洒落な人は、制服の形は変えられないから生地を上等なものにして、カラダにフィットした服をオーダーしていたのである。チャールズ皇太子などは、今もサヴィル・ロウで軍服を誂えているという。

ならば上等な紺のサージ、とはいったいどのようなものなのであろうか。

筆者の稚拙なワードローブを見ると、それに該当するものが2点あった。ひとつはダベンツァのダブルブレストジャケット。もうひとつは、パリのドミニク・フランスでオーダーしたシングルブレストブレザーである。ともに20年以上愛用してもヨレを感じさせない良いサージを使用している。

どちらも右上から左下に流れる綾なので、たて糸は双糸(2本の糸を1本縒りにしたもの)であることは知っていたが、今回倍率15倍のルーペで確認したところ、たて糸よこ糸とも双糸使いであった。

最近は、たて糸を双糸使い、よこ糸を単糸にしたイタリア系のサージが流行なようだが、トラディショナルなサージはたてよことも双糸使いに限る。

糸番手は、替え上着なので60番手双糸あたりを使っているように思う。スーツ用のサージとしては、これより細い70から80番手ほどのサージが適当であろう。

内ポケットに補修用の小さな生地が入っていたので、それをほぐして糸をルーペで確認すると、濃紺の糸に混じって、黒や淡い青の色糸が混じっていることが確認できた。これはトップ染めされた服地の証しとなる。

トップ染めとは、糸にする前の羊毛をスライバーという綿にした状態で染めることを指す。染料を多く使用する贅沢な手法だ。しかも染めた綿を糸にする段階で、さまざまな色糸を微妙に混ぜて仕上げるから、同じ紺でも、糸段階で染めたものや生地の段階で染めたものより、深みのある紺になるのである。

糸をほぐしてルーペで確認するときは、羊毛の繊維そのものの太さや長さも観察しておこう。中国製の服地のなかには、スーパー150と表示されていても、いざ糸をほぐしてみると、太くて短い羊毛が使われていることがたまにあるからだ。

優れた風合いをもつサージを見極めて、デキる男を目指す。その道はけっこうマメな努力が必要なのですな。

 

参考:

大西基之著『メンズ・ウエア素材の基礎知識 毛織物編』万来舎