デキる男は、良いサージを選ぶ目を養っているものだ!?

モード逍遥#18

スーツの売上は毎年減っているようだが、オーダーメイドの需要は年々高まっている。あるオートクチュールのデザイナー氏は、「良い服地を選ぶ目を持つことは、英語や経済学を学ぶのと同じくらい重要な教養のひとつである」とおっしゃっていたが、まさに正論。

そこで、オーダーメイドの際に必要な、優れた服地を選ぶ基礎知識について考えてみることにしたい。

オーダーメイドでスーツを誂えたことのある人でも、判ったつもりで理解していない服地に関する専門用語がある。

たとえば、A番手とスーパー表示の違い、Bラミーとリネンはどこが違うか、C梳毛と紡毛って何だろう、D平織りと綾織りはどちらが夏向きか、Eサージとギャバジンの見分け方、F秋冬にふさわしい生地の重量は、G服地の表裏の見分け方、Fお洒落な人がトップダイにこだわる理由─ などである。

こうした疑問にスラスラと答えてくれるのが、大西基之著『メンズ・ウエア素材の基礎知識』(万来舎)だ。

著者の大西さんは、筆者の尊敬するお洒落の先輩、チューブの斉藤久夫さんや村松周作さん(モード逍遥#15に登場)と同じ、メンズファッション研究所の第一回卒業生である。

お二人と親しくさせて戴いている関係もあって、大西さんは、業界のパーティなどでお会いすると必ず声をかけてくださる。たいへんにジェントルな方で、論旨明快な理論派。著書にはそんな大西さんの性格が反映されており、専門書なのだが素人が読んでも、面白くてためになる。一読をお勧めしたい好著だ。

ところで筆者は、「デキる男は紺のサージを選ぶ目を持っている」と考えている。その理由を挙げておこう。

自動車評論の草分けにして、ウエルドレッサーとして評判の高い故小林彰太郎氏が、天皇の御召服調整を賜っていた金洋服店(モード逍遥#11に登場)で初めて洋服を仕立てようと思ったとき、氏が注文したのは、“昔の海軍の士官が着ていたような緻密なサージを使った濃紺のダブルブレストブレザー”だったという。

つまり、紺のサージは、男服の基本にして奥の深いものなのである。