つい長居してしまうのは、シェフの人柄とあったかくて素朴な料理のせい。~静岡県富士市 タヴェルナ イルボルゴ  Vol.1

「タヴェルナ イルボルゴ」は静岡県富士市にある地域の方々に愛される店だ。オープンから3年、10坪の小さな店を1人で切り盛りする後藤シェフは、東京の有名店やイタリアでの修行を経た実力派シェフ。

イタリア各地の伝統料理を大切に、地元の新鮮な食材をアレンジした、素朴でシンプルな料理がお得意だ。さりげないおもてなしを大切にしながら、極力お客さんの要望も聞く。

シェフとお客との距離感が近く、心が落ち着ける店だ。近隣の人だけでなく、静岡や三島、東京からも新幹線で足繁くこの店に通うお客が多いそうだが、それは料理の美味しさはさることながら、シェフの温かな人柄と寛げる空間があるからなのだろう。

近々、イルボルゴの2階には新たにワインバーがオープン予定。つまみとともにワインを楽しむ気軽なバーは、人々の憩いの場になるのだろう。

「イルボルゴ」とはイタリア語で郊外という意味。小さな街に建つ小さなイタリアン、イルボルゴは郊外のほっと寛げる極上イタリアンだった。

後藤シェフ

—後藤さんは、イタリアンの修行は東京でされたんですよね?

はい。大阪の調理学校を出てから、大阪心斎橋の「ピエトラサンタ」で修行して、その後東京麻布十番の「ラコメータ」、表参道の「リストランテ ダ フィオーレ」、イタリアへ行きました。

帰国後は、代官山の「イルチルコロ」等でシェフを務めていました。

 

—その後、独立されて富士市にお店を。なぜ東京ではなかったのでしょうか?

東京でシェフの経験もした中で雑誌にも掲載していただくなど、ある程度名前も知っていただけたので東京独立も考えました。

しかし、有名シェフの店さえも閉店していく状況を目の当たりにして、「自分の実力では東京で店を持つのはあまりにギャンブルなのでは」と感じました。

「長く続ける事が先ずは1番」と考え、地元でやることを決意しました。地元といっても僕自身は隣の富士宮市の出身なのですが。

 

—富士市には馴染みがあったんですか?

富士宮と富士市は仕事や学校などで行き来がある町同士です。JR富士駅周辺がこの地域の中心と考え、駅がある限り再生されていく見込みと三島方面、静岡方面からも電車で来てくれると思ったのです。

東京からのお客様も新幹線できても三島乗り換えすれば駅まで、新富士駅まできてもタクシーで千円くらいということも考慮しました。

また、田舎で車社会なので店に駐車場は必須ですが、駅周辺なら公共のパーキングもあるし、代行やタクシーもすぐに捕まります。ワインを飲んでいただくのに帰りの手段があるというのはとても大事なことだと思いました。

 

—シェフを目指した当初から地元に帰ってこようと考えていたんですか?

いえ、もともとシェフになろうと目指したわけではなくて。たまたま高校の先輩が調理師学校に進むということを聞いて、「ああ、そういう道もあるんだ」と気づかされたのが初めの一歩でした。

絶対にシェフを目指そうという強い気持ちがないまま学校に進んだので。高校時代は軟式テニスに熱中していましたから。

でも、何かモノを作るというクリエイティブなことには興味があったので、調理の道に進んだのは自然なことだったのかもしれません。

両親も会社員ではなく自営業だったので、自分が会社員になることは想像できませんでした。

 

—富士の人たちと東京の人たちの違う点は?

食の嗜好という点では、特に違いはありません。東京には新幹線で1時間もかからない距離なので、東京のものが食べたかったらすぐに行くこともできる。そんな中でイルボルゴがあるからここでいい、と思っていただけたら嬉しいなと思います。

お客様は東京の店や流行りの料理の情報も詳しいので、緊張感はありますよ。「どうしてそんなことまで!?」というような東京情報まで知っていたりしますよ。

 

—食材はどのように調達していますか?

野菜は地元の若手農家さん2軒と実家から直接やり取りしています。

実家では少しですが母が作っているので。輸入野菜は東京から。魚は地元の魚屋さんから静岡市場、沼津市場から届いた魚を店に直接配送していただいたりしています。

自分で直接市場に行く事もあります。肉類は地元の精肉店から地元産のものを中心に取り引きしています。