日本が誇るジーンズのセルビッチは無用の長物!?

製造には何種類ものコットン製ステッチを使い分けるなど、こだわりのディテールを満載し、最後はユニオンスペシャルと呼ばれる旧型ミシンで裾をチェーンステッチで仕上げるのがお約束事。日本のヴィンテージ・レプリカ・ジーンズの製造システムは世界のファッション業界を驚かせたのである。

今やジャパンクォリティを代表するアイテムとなったジーンズ。そのロールアップした裾口には、誇らしげに赤耳と呼ばれるセルビッチが付いている。

しかしこのセルビッチが何のためにあるのか、議論の的になったことはない。シルエット的に考えると、むしろ無用の長物と思えるセルビッチについて考察することにしよう。

格好良いトラウザーズを作るためには、生地のたて糸(地の目)をセンタークリースにそって通すことが重要だ、と以前書いたことがある(モード逍遥#8)。ところがジーンズの地の目はセンターなどに通っていない。

ジーンズはセルビッチが外側の脇縫い線にあるために、そこに地の目の基準をもってくる以外ないのである。言い換えれば、セルビッチによってジーンズのデザイン的な自由度はかなり制限されていることになる。

写真を見ていただきたい。これはジーンズの前身の上部中心から裾へかけて、たて糸の地の目にそって白糸でラインを記したもの。このライン通りにアイロンでプレスすると、クリースラインは裾のセンターから3から5センチほど内側へ寄ってしまう。

セルビッチ付きのジーンズをはいて鏡で観察してみればお解りになると思うが、ジーンズの外側のラインは、脚の外側に沿って布地はまっすぐに下へ落ちる。しかし、内股のラインは、布が大量に内側へ逃げて、がに股のようなシルエットになっているはずだ。

ジーンズの元祖リーバイスは、リーバイ・ストラウス氏が販売を担当。製作は仕立て屋のジェイコブ・デービス氏がおこなった。ストラウス氏ほど有名でないが、この仕立て屋はかなりの才人だったのではないか?

というのもジェイコブ氏の考えた、生地の耳の部分をサイドに使う裁断は、布の端をロックミシンでかがるという工程を省く合理的なものだからだ。

しかも、地の目をあえてジーンズの外側に通して、内股部分にゆとり量をもたせたがに股シルエットは、馬の鞍にまたがったときにも快適だし、しゃがみこんで作業することの多い金鉱掘りにも重宝だったに違いない。

セルビッチには、このような知られざる機能性が秘められていたのである。