人類が月で聴いた最初の曲はフランク・シナトラの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」である

オトコ映画論 #31

1969年7月20日アポロ11号が月面に着陸した。エドウィン・ユージン・“バズ”・オルドリンとニール・アームストロングが月面への人類の第一歩を記したが、月着陸船イーグルの船内で、フランク・シナトラが歌う「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン(Fly Me to the Moon)」をカセットテープで流して聴いたという。

これは日本語で「私を月に連れて行って」という意味のジャズのスタンダードナンバーであり、1954年に作曲家・作詞家のバート・ハワード(1915-2004)によって作られた。初演はニューヨークのキャバレー〈ブルーエンジェル〉において、ヴォーカルのフェリシア・サンダース(1922-1975)が歌ったものだった。

ただし、この曲のタイトルは「(In Other Words)言い換えると」が最後に付いて、「Fly Me to the Moon(In Other Words)」だった。

現在よく耳にするフランク・シナトラ(1915-1998)のバージョンが完成するのは、1962年秋のこと。作曲家・編曲家のジョー・ハーネル(1924-2005)が3拍子から4拍子のボサノヴァ調に書き直して、シナトラのカバーが爆発的にヒットした。

曲は、1964年8月にリリースされたリプライスレコードのスタジオアルバム『It Might as Well Be Swing』に所収された。演奏カウント・ベイシー楽団、クィンシー・ジョーンズ編曲だった。そのヴォーカルナンバー以外にも、インストゥルメンタルナンバーとしても知られ、オスカー・ピーターソンやロイ・ヘインズらのジャズアーティストが取り上げている。

シナトラがこの曲を発表した1960年代、 アメリカ合衆国は「アポロ計画」の真っ只中にあって「月に連れて行ってもらえる」のは間近に迫った近未来の出来事だった。

そのため「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」はある種の時代のテーマソングのように扱われ、これがこの曲の爆発的なヒットにつながった。シナトラ・バージョンの録音テープはアポロ10号・11号にも積み込まれ、人類が月に持ち込んだ最初の曲になったわけだ。