ハリー・ウィンストンのレトログラード、宝石屋と侮ってはならない!? 実力派の時計屋でもある

なにしろ機械式狂いなもので #23

腕時計の多くが丸型なのは、針が円運動しながら時の移ろいを示すから。小窓で表示されるケースが多い日付や曜日なども、丸いディスクが回転して新たな日・曜日へと移る。その動きは、一瞬も途切れることなく、未来へと流れ続ける時を示すにふさわしく、また歯車を用いる機械式では、設計上極めて合理的でもある。

しかしどんな世界にも、偏屈な人物はいる。時計界でもまたしかり。レトログラードは、そんな偏屈な先人の時計師が考案したユニークな機構だ。一般的な円運動による様々な時の表示では、始点・終点はなく、針あるいはディスクは連続して回転し続ける。

しかしレトログラードには始点と終点とが存在する。そして針は始点から扇状に進み、終点まで達すると瞬時に始点へと戻り、再び終点へと向かって動き出す。つまり針が行き来しながら、時を示すのである。

例えばこのレトログラード機構を曜日表示に用いれば、月曜日を始点とし、24時間毎に針が進んで次の曜日を示し、7日目に日曜日を示した後、深夜0時に始点である月曜日のインデックスまで戻るというわけ。

『ハリー・ウィンストン』は、このユニークなレトログラード機構を得意とし、ブランドを象徴するメカニズムのひとつとしてきた。