日本のアイビースーツが“畳み臭い”のは、メートル法のせいだ!?

モード逍遥 #13

たしか伊勢丹メンズ館のオープニング・パーティのときだったと思うが、テーラー・ケイドの山本佑平さんが店頭に出ていらしたので、筆者は1960年代初頭に日本に登場したVANやJUNのアイビースーツと、横田や福生や横須賀などのベース周辺に最初店を構えていた、山本さんらの作るアイビースーツの違いについて質問したのである。

山本さんの答えは簡潔明瞭。「日本のアイビーは畳み臭いよね」。

なるほどウマイことを言うな、と感心したのであるが、この短い言葉にはふたつの深い意味が隠されていると思った。

ひとつは和洋折衷の生活様式が、畳み臭い洋服を生む要因になったこと。そしてもうひとつは、1958年以降、日本の洋服作りにはメートル法が採用されているが、山本さんたちはヤード・ポンド法を使用してきたために、仕上がりに違いが出るということである。

まず前者について説明するが、日本のオフィスは洋式だが、たまにお得意様を接待するようなときは靴を脱いで座敷にあがるケースも少なくない。

畳の上で正座したりあぐらを組んだりするようには、西洋生まれのスーツは作られていないため、次第に接待の多い管理職のスーツは、畳の上で立ち座りが楽にできるゆったりとした大きさになってしまった。幸い最近は、あらゆる分野で椅子生活が普及し、東宝映画『社長シリーズ』に登場するような重役スーツは減っている。

いっぽうメートル法による畳み臭さの要因は、少し説明を要する。そこでヤード・ポンド法によく似た日本の尺貫法を例にして説明を試みてみよう。