この秋公開の日本映画の強力3本だて!? 『怒り』『SCOOP!』『永い言い訳』をハズすな!?

オトコ映画論 #29

この秋、日本映画がおもしろい。すごい3本と出会ってしまった。おそらく、日本アカデミー賞をはじめとする男優部門各賞を総なめにするのは、この3本から選ばれるだろう。

渡辺謙、松山ケンイチ、妻夫木聡、綾野剛、森山未來、ピエール瀧、三浦貴大らが出演する、『悪人』(2010)『許されざる者』(2013) の李相日監督、同じく『悪人』の吉田修一原作による東宝映画『怒り』(9月17日より東宝配給でロードショー)は、すごい猟奇サスペンスだ。

©2016映画「怒り」製作委員会

殺人現場に「怒」という血文字が残った殺人事件から1年後、千葉、東京、沖縄で3つのストーリーが紡がれる群像劇で、前歴不詳の3人の男(松山ケンイチ、綾野剛、森山未來)と出会った人々がその正体をめぐり、疑念と愛情のはざまで揺れる様子を描く。

もう、人間の業が余すところなく露見される重い人間ドラマといえる。「人を信じること」が全編で描かれるが、すべての登場人物を刃のように傷つけてしまうのがおもしろい。ルックは、『セブン』や『ゾディアック』に匹敵するおどろおどろしさがある。

©2016映画「怒り」製作委員会

撮影監督は『どついたるねん』(1989) 『バタアシ金魚』(1990) 『悪人』『許されざる者』の笠松則通。日本映画界最高水準の画づくりをしている。

原作者・吉田修一さんが参考にしたのは、外国人講師リンゼイ・アン・ホーカーさんを殺害して、整形し2年8か月逃亡していた市橋達也事件だったそうだ。

日本映画界最高のキャストが演じているだけに、作品自体に圧倒的な重厚感がある。とくに、妻夫木聡と綾野剛のゲイカップルは熱演といえる。渡辺謙と松山ケンイチに絡む宮崎あおい、森山未來に絡む広瀬すず、妻夫木聡と綾野剛に絡む高畑充希らの女優陣もすばらしく、観る者を飽きさせない。

©2016映画「怒り」製作委員会

犯人・山神一也を追う警察側を演じているのがピエール瀧と三浦貴大なのだが、『天国と地獄』の仲代達矢や『飢餓海峡』の伴淳三郎のようになっていれば、まったく非の打ち所がなかった。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ作品などを手がけた坂本龍一が、ミステリアスな音楽を提供してくれた。