カルダン、レノマ、そしてチルブリー。本物のコンケーブ・ショルダーは機能性も抜群だった

モード逍遥 #12

エムズブラックの展示会を見物したら、カルダンを彷彿させる、もの凄いコンケーブ・ショルダーのネイビーブレザーが出ていて、1960年代のパリ・メンズモードの記憶が一挙に蘇ってきた。

ピエール・カルダンは1962年頃、ハイウエストで胸幅が極端に狭く、裾へかけて広がっていくパゴダ(塔)ラインのスーツでメンズモードに革命を起こした。その後、デザインはエスカレートしていき、コスモルック(1967年)とか、中国寺院の跳ね上がった屋根を肩先に取り入れた珍妙なものも生み出した。

パリに在住しているエムズブラックのデザイナー松下貴宏さんが今回試みたコンケーブ・ショルダーは、初期のカルダンのコンケーブをやや強めに取ったオリジナル性の高いものである。自らパターンを引き、服地にも造詣が深い方だけに、素材やディテールに魅力が溢れている。さっそくパリのアトリエでシューティングしたという写真をお借りした。

photo:エムズブラック

ダンディな坪内浩さん(モード逍遥#7に登場)はすでにこの服に反応していて、「あんな格好いい服には、遠山さんが言ってた昔のチルブリーの靴が合だろうね。チルブリーは代官山ヒルサイドテラスにあったキャトルサンクという靴屋にも置いてあったのだけれど、あんなデザインを現代的にアレンジしたものをやってみたい」と、おっしゃっていた。

当時中学生だった筆者がなぜカルダンやチルブリーに詳しかったかというと、3歳年上の兄が買ってきた『HEIBONパンチDELUXE(通称デラパン)』の別冊付録をこっそりと読んでいたからである。縦21cm横18cm、総ページ数50Pの小雑誌は、日本最速で世界のメンズファッションシーンをレポートしていた。