チリカベの最高峰コンチャ・イ・トロの『ドン・メルチョー』。’88年は絶品である

さて、チーフワインメーカーであるエンリケ・ティラドの来日に合わせて開催されたセミナーでは、最新の2013年や日本初リリースの2011年のほか、2010年、2005年などのバックヴィンテージが試飲に供された。極め付けはドン・メルチョーにとってセカンドヴィンテージの1988年。

じつは88年のドン・メルチョーを味わうのはこれが初めてではない。今から10年前、取材でチリを訪ねた際、サンティアゴの有名ワインショップで売られているのを目ざとくも発見。購入して帰ったことがある。

その後、ワイン関係者との飲み会で、デカンターに移して振る舞ったところ、誰ひとりとしてチリワインとは気がつかず、「きれいに熟成したサン・ジュリアンあたりの2級格付けシャトー」と答えた人物さえいた。

さて同じワインを10年ぶりに味わったわけだが、色は10年前にも増してレンガがかっているとはいえ、今なお果実味は生き生き。少しもフレッシュさを損なわずにいることに驚かされた。

スギやミントといったこのエリアのカベルネらしいフレーバーに、ハバナシガーを思わせるスモーキーさ。森の下草のような湿った香りが艶っぽい。緻密なタンニンは丸みを帯び、滑らかな舌触り。真昼間のテイスティングだが、吐器に吐き出すことは憚られ、思わずゴックンしてしまった。

一方、この8月から日本で発売が始まった2011年。涼しく、雨の少ない年で、ヨーロッパの造り手がよく使う、“クラシックなヴィンテージ”といえるだろう。2005年や2010年のような過剰なまでのパワフルさは抑えられ、エレガントでデリケートなスタイル。

フレッシュな酸味がきれいにのっており、しなやかでキメ細かなタンニンが相応の骨格を作っている。このワインは今飲んでも美味しいが、88年と同じく、30年の熟成にも十分耐えられるに違いない。

11,000円という小売価格は、チリワインとしてはかなり高価。しかし、サン・ジュリアン2級のレオヴィル・ラス・カーズを買おうと思えば最低でもその2倍は覚悟しなくてはならない。30年後を見据えた投資と思えば、2011年のドン・メルチョー。とてつもなく魅力的な存在である。

Photos:Tadayuki Yanagi