サーフスポット確保のためのベトコン攻撃は、ワーグナーの「ヴァルキューレの騎行」にのって!?

オトコ映画論 #26

「朝に嗅ぐナパームの香りは最高だ。むかし12時間ぶっ続けで丘を爆撃してなあ、その跡を散歩したが死体ひとつ転がってなかった。そこら中にガソリンの匂いがした。勝利の匂いが!」とは、映画史上の名セリフといえる、1979年のフランシス・フォード・コッポラ監督作品『地獄の黙示録』(原題:Apocalypse Now)で、海沿いのベトナムの農村をヘリコプター部隊で急襲して焼き払った米陸軍第一騎兵師団の指揮官、ビル・キルゴア中佐(ロバート・デュヴァル)の言葉だ。

「地獄の黙示録 劇場公開版/特別完全版」 ブルーレイ発売中:1,886円(税抜) 発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント ©1979 Omni Zoetrope. All Rights Reserved./© 2000 Zoetrope Corporation. All Rights Reserved.
『地獄の黙示録 劇場公開版/特別完全版』
ブルーレイ 1,886円 (税抜)
発売元: NBCユニバーサル・エンターテイメント©

映画は、ジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』が原作で、物語の舞台だったアフリカのコンゴから、ベトナム戦争に移して翻案した地獄絵巻。1979年カンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドール受賞作品である。翌年のアカデミー賞でも8部門ノミネートされ、撮影賞(ヴィットリオ・ストラーロ)と音響賞を受賞した。

ベトナム戦争後期、米陸軍空挺士官ベンジャミン・ウィラード大尉(マーティン・シーン)は、妻と離婚してまでして戦場に帰ってきた。彼はCIAの要請で敵要人暗殺を従事していた古参兵で、サイゴンのホテルに滞在中、米軍上層部に呼び出され、元グリーンベレー隊長のウォルター・カーツ大佐(マーロン・ブランド)の暗殺指令を受ける。

カーツ大佐は、米軍の命令を無視して暴走し、カンボジアのジャングルの中に独立王国を築いていた。ウィラード大尉は海軍の河川哨戒艇に乗り込み、乗組員には目的地を知らせぬまま大河を遡上する。

ものすごいのは、2時間30分(劇場公開版)のうちわずか15分ぐらいしか登場しないのに、圧倒的な存在感で映画を乗っ取ってしまうビル・キルゴア中佐だ。ウィラード大尉が目撃する戦争の狂気のひとつとして登場するのみで、キルゴア中佐はなんとサーフィンをするために、ベトコンの前哨基地を襲撃するのである。