スコセッシ監督『カジノ』に流れるジョルジュ・ドルリューの「カミーラのテーマ」はゴダールから

3時間近いマーティン・スコセッシの映画なので、ザ・ローリングストーンズやマディ・ウォーターズやサミー・デイヴィス・ジュニアなど、夥しいサウンドトラックが流れる。音楽プロデュースは元ザ・バンドのロビー・ロバートソンである。

まずオープニングクレジットに流れ、18世紀末のヨハン・セバスチャン・バッハ「マタイ受難曲」が映画のメインテーマのように印象的に使われる。そしてもう1曲、ジャン=リュック・ゴダール監督作品『軽蔑』(1963)のメインテーマとして使われた、ジョルジュ・ドルリュー作曲の「カミーラのテーマ」が、悲劇なエースとジンジャーの夫婦のテーマ曲のように使われ、ラストに流れるのだ。

 

ちなみに、1963年はおもしろい年でマーティン・スコセッシ監督が生涯のトップ10に入れる2本、イタリアでフェデリコ・フェリーニの『8 1/2』とルキノ・ヴィスコンティの『山猫』が撮られた。

ゴダールの『軽蔑』はアルベルト・モラヴィアの同名小説を原作に、2年前に結婚した女優アンナ・カリーナとの結婚生活が破局寸前で、自己を投影した愛の不可能性について描いた作品と言われる。

ブリジット・バルドー演じる女優の妻カミーラと、ミシェル・ピッコリ演じる脚本家の夫ポールが中心に物語られるが、妻は夫を軽蔑すると言い残して、別の映画プロデューサーのジェレミーとデキてしまう。

最後はハイウェイで派手な交通事故があって、無残にもスポーツカーには男女の変わり果てた死体があった。つまり、不貞してドラッグ中毒でのたれ死んだジンジャーと、不貞して交通事故死したカミーラを重ね合わせたのだ。すごく悲劇的な旋律がよく合う。

余談だが、このジンジャーと不貞するほんのチョイ役の間男を、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984)でデニーロと共演したジェームズ・ウッズが演じている。これはマーティン・スコセッシから聞いた話だが、『レザボア・ドッグス』(1992)のハーヴェイ・カイテルが演じた主役Mr. ホワイトの役は最初ジェームズ・ウッズに振られたらしい。

ところが、ウッズのエージェントは無名の新人が書いた脚本をよく読まずに断った。その脚本はクエンティン・タランティーノのものだった。怒ったウッズはエージェントをクビにした。だからこの映画に出るとき、スコセッシに「どんな役でもいいから、出たい」と言ったそうだ。

ジョルジュ・ドルリューは1925年生まれのフランスの作曲家(1992年没)。エンニオ・モリコーネを別格として、ジョン・バリーらと並ぶすごく好きな作曲家である。

『ピアニストを撃て』(1960)、『恋のエチュード』(1971)、『映画に愛をこめて  アメリカの夜』(1973)、『隣の女』(1981) など、フランソワ・トリュフォー監督とのコンビで作った作品はどれも珠玉の名作だ。

ほかに、ベルナルド・ベルトルッチの『暗殺の森』(1971)、ジョージ・ロイ・ヒルの『リトル・ロマンス』(1979)、オリヴァー・ストーンの『プラトーン』(1986)などが忘れられない。

 

参考:

Casino (1995) End theme. – YouTube