レフン監督の『ドライヴ』で、夜のLAに「オー・マイ・ラヴ」が流れる

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ほどなくしてスタンダードは出所してくるが、服役中の用心棒代として多額の借金を負って、妻子の命を盾に強盗を強要されていた。そんななか、スタンダードに命を救われた「その男」は無償で彼のアシストを引き受ける。

背中にサソリの模様が入った金色のスタジャンを着た、寡黙なゴズリング(過去は一切語られない) が超カッコいい。2人組の強盗を逃すオープニングで、ラジオでNBA中継を聞きながら警察無線を傍受して逃走経路を確保し、夜のロサンゼルスをまんまと逃走するわけだ。その間5分間、彼のセリフは1つもない。

この背中のサソリは、川を渡ろうとしてカエルの背中に乗せてもらったサソリが、カエルの背中を「本能のまま」に刺してしまう寓話の象徴である。

名無しの男といえば、セルジオ・レオーネ監督のマカロニウエスタン「ドル三部作」、『荒野の用心棒』(1964)、『夕陽のガンマン』(1965)、『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』(1966)でクリント・イーストウッドが演じた主人公を思い出す。

それにしても、『ブルーバレンタイン』(2010)のライアン・ゴズリングと『17歳の肖像』(2009)のキャリー・マリガンのロマンスが素晴らしい。ラスト、2人は出会ったエレベーターで1回だけキスするが(キスシーンのライティングが完璧)、それまでは「プラトニックラヴ」。マリガンは映画の前半寒色ベースで、後半暖色ベースで描かれる。

音楽担当は元レッド・ホット・チリ・ペッパーズの元ドラマー、クリフ・マルティネス(1954年生まれ)。スティーヴン・ソダーバーグ監督の『セックスと嘘とビデオテープ』(1989)、『KAFKA/迷宮の悪夢』(1991)、『わが街 セントルイス』(1993)、『蒼い記憶』(1995)、『スキゾポリス』(1996)、『イギリスから来た男』(1999)、『トラフィック』(2000)、『ソラリス』(2002)、『コンテイジョン』(2011)などを手がけている。

他の監督とは、ブラッド・ファーマン監督の『リンカーン弁護士』(2011)、ハーモニー・コリン監督の『スプリング・ブレイカーズ』(2012)などがある。ニコラス・ウィンディング・レフン監督作品とはなくてはならない人材で、続く『オンリー・ゴッド』(2013)も、今年のカンヌ国際映画祭に出品されたエル・ファニング主演の『The Neon Damon』(2016)も、音楽を担当している。