無農薬畑の完熟コットンを手摘みで、フィルメランジェの白いTシャツが格好いい

前出した『放浪のデニム』では、遺伝子組み換えコットンによって殺虫剤の散布量は抑えられるが、害虫が慣れるのには時間がかからないだろうという見解だ。さらに将来的には、遺伝子汚染による昆虫や植物へのリスクも否定できない。

フィルメランジェが使う生きた素材の基本条件は完熟コットンだという。綿は蜜蜂などの昆虫によって受粉され、開花後に実がふくらみ莢(さや)が弾けて白いコットンボールが飛び出る。

昔は奴隷制度による安い労働力で完熟したコットンボールだけを手摘みしていたが、今は一部が弾けたら農薬(枯れ葉剤)を散布して葉を落とし、機械によっていっきに収穫する農地がほとんどだ。しかしそれでは、未成熟のものや莢から完全に飛び出ていないコットンが混じりこみ品質が落ちるという。

フィルメランジェでは、世界でわずかに残った手摘みによる農地から、完熟コットンだけを買い付けている。完熟なうえに農薬類を使用していないから、綿の組織が健康的で、製品にすると汗の吸収が良く、乾きも速いという特長をもつ。

この会社のこだわりはそればかりでない。買い付けた最上質の原材料を、独自の番手と縒りで紡績し、まったくオリジナルの糸を作っている。さらにその糸を、オゾン漂白という環境に優しい方法で白くし、釣り機と呼ばれる希少な編み機で丁寧に製品に仕上げている。

釣り機によるTシャツは時間がかかるが、やわらかで風合いは抜群。しかし品質にばらつきが出るのが短所。糸がある程度太ければ天竺編みでも安定するのだが、細めの糸を使う定番のTシャツでは難が出ることが少なくない。

そこで2016AWから釣り機の風合いを保ちながらも、ばらつきを抑えた編み機を工場と協力して新開発した。どうやら針などに工夫があるらしいのだが、詳細は企業秘密だという。

「ファッションとは豊かさの表現です。自分だけでなく他を大切にするという心からそれは始まる」と小西氏。

単に、私は金持ちです的な服でアピールしても真の豊かさの表現にはならない。小西氏がフィルメランジェのTシャツに込めた思いとは、持続可能な環境貢献を熟慮した製造工程を保持しながら、服作りにかかわったすべての人に豊かさを分配することだったのではないだろうか。

それに思い至ると、ただでさえシンプルで気持ちの良いこの白いTシャツが、今一番格好いい、と感じるのである。

取材の最後に超健康優良児の綿(ワタ)を見せていただいた。糸に紡績する前に、葉や莢のカスが混じった綿をきれいに整える工程があるのだが、「ごくたまに生産者が作業中に食べたお菓子の包み紙が微量に残ったままで製品になってしまうことがあるのです」と、昼間さんが笑いながら教えてくれた。

そうしたTシャツはもちろんB品扱いだが、まさにそれこそが手摘みであることの証明。カラフルな包装紙の混じった糸は、遠く離れた生産者と日本の企画者をつなぐ信頼の絆のように筆者には思えてくるのである。

【Byron’s Promotion】