無農薬畑の完熟コットンを手摘みで、フィルメランジェの白いTシャツが格好いい

モード逍遥 #5

以前ある雑誌の座談会でテリー伊藤さんが「白いTシャツにジーンズが似合う男が一番格好いい」と言い放ったことがあった。筆者はなるほどその通りだ、と同意しながらもそのときは、白いTシャツにジーンズが似合う男なら他に何を着ても似合うはずだから、という理由しか思い浮かばなかった。しかしテリーさんの放った言葉は、今や重みをもって筆者の胸に突き刺さってくるのである。

そんな考えに到達するきっかけは、青山キラー通りに面したフィルメランジェでオリジナルのTシャツを見たときだった。それはまったく普通の白いTシャツであるにもかかわらず、値段が1万円近くした。理由は、デザインやブランドバリューでなく、素材が抜群に優れていたからである。

オーナーの小西康雄(1945年生まれ)氏は、「ファッションは第一次産業である」と豪語する、白髪に白いTシャツと白いキャンバススニーカーが似合う人であった。

彼は、戦後アメ横で買って愛用したTシャツやジーンズ、中古屋で見つけた1930年代のスウェットシャツなどが「日常品なのに糸そのものがいいから、気持ち良く長持ちする」ことを実体験していた。フィルメランジェを始めるにあたって、「ヴィンテージの復刻でなく、現代の生きた素材を使って着るための道具を作ってみよう」と考えたという。

2009年に日本でも刊行されたレイチェル・ルイーズ・スナイダー著『放浪のデニム』(エクスナレッジ)によると、綿を作る農地は全世界の農地の約3%にすぎないが、世界で使われる殺虫剤の25%弱、農薬の10%を綿作農地が消費しているという。フィルメランジェで素材開発を担当している昼間直巳氏によると、その環境はさらに悪化しているらしい。

「現在、世界の綿作農地の90%で殺虫成分の遺伝子が種に組み込まれているコットンが栽培されています。オーガニックコットンは全世界の1%にすぎません」

こうした環境に加え、政治や経済が複雑にからむ途上国の農地で、超長綿(細く、長く、しなやかな一級品)の生きた素材を見つけるのは、「かなり困難だけれど、やり甲斐があります」とのことだった。