大スクープ!? ルイ・ヴィトンを初めて買った日本人が判明

モード逍遥 #4

欧米のラクジュアリーブランドには創業100年を超えるものが少なくない。その歴史、培ってきた技術などによって生み出された最新の製品は素晴らしいものがあるだろう。

だが、そうした情報は服飾雑誌にまかせておいて、筆者には別の興味がある。それは海外の老舗ブランドで最初に買い物をした日本人は誰かということである。ファッションとは社会の半歩先を映す鏡の役割を果たすことがある。当時、誰がどんな目的で購入したかを調べることは、日本人とファッションを考えるうえで興味深いことに思えるのだ。

ルイ・ヴィトンの旅行トランクを初めて購入した日本人は、長らく後藤象二郎だとされていた。しかしその定説は2004年に覆されることになる。同年に兵庫県立美術館などで開催された『Universal Symbol of the Brand ルイ・ヴィトン 時空を超える意匠の旅』展のために調査を依頼された三浦篤(東京大学准教授)氏は、古い顧客名簿のなかにふたりの日本人の名を発見した。

それは後藤象二郎がオーダーした約5年前、1878年のことであった。日本人の名はN.Sameshima、T.Nakanoとあるのみで、何を購入したかは判らない。うちひとりのほうは三浦氏の調査で、特命全権公使としてパリへ派遣された鮫島尚信(さめしま なおのぶ)ということが判明。

さらに顧客名簿には、大山巌(陸軍軍人。1882年購入)、後藤象二郎(政治家・自由党。1883年)、小倉久(関西大学創立者。1884年)、西園寺公望(政治家・政友会。1886年、1888年)などの名がしるされていた。しかし鮫島とともにルイ・ヴィトンを最初に購入したT.Nakanoが誰なのかは不明のまま現在に至っている。

それが気になって約2年ほど前に、東京・駒場の東大教養学部・総合文化研究科へ恐る恐るお邪魔したところ、その後教授になられた三浦氏は笑いながら「あの時代にパリへ行った日本人は何人もいないはず。遠山さんなら、何か別の調べ物をしているうちに偶然見つかるかもしれませんよ」と、予言してくれたのである。

そのお導きだろうか、つい最近、明治の服制に関する本『洋服・散髪・脱刀』(モード逍遥#1で紹介)を読んでいたら、中野健明(なかの たけあき)という名を偶然発見した。