世界中の料理人が注目する「神保町 傳」は、和食の新世代である!?

「会場で『ザ クローブ クラブ』アイザ マッカ―レ(26位)の顔を見つけた時はうれしくて、彼はうちの店に来てくれていて“いつかは50ベストの授与式で会おうね”って約束した友達だから」。

ほかにも『ノーマ』レネ・レゼッピ氏や『オステリア・フランチェスカ―ナ』マッシモ・ブットーラ氏など、そうそうたるシェフたちが、皆、長谷川氏に声をかけて“仲間入り”を祝福してくれたという。

日本料理は海外から見ると謎めいた料理だ。寿司や天ぷら、蕎麦は専門料理だから技術的な説明を受けるとプロの料理人であれば、すぐに理解できる。ただ、日本料理は茶道や神事に関わる儀式的な要素やしきたり、季節の素材、地方性など、さまざまな要素が背景にある。つまり技術だけではないのだ。

「うちの店に来るシェフたちは、みんな“日本料理は難しい。お前なら簡単に説明できるだろう”と質問されるけど、僕らも懐石を説明するのは難しい。だからうちでは“相手のことを思って用意し、作り、楽しんでもらう料理だ”って簡単にいいます」。

先付け、お椀、造り、焼き物、炊き合わせ、食事、甘味といった流れはあるものの、長谷川氏の料理にはユーモアやサプライズが仕込まれている。熱々のフライドチキンに見立てた「DENタッキー」、スッポンの骨をそのまま器に使うなど、およそ伝統的な日本料理店には出てこない演出。

入り口に土を掘り起こしたスコップを置いておき、デザートを同じ演出で出すなど。「おいおい、ここは幼稚園か?」と海外のジャーナリストは半ばあきれていたけど……。そんな笑いがとれる日本料理店って、今までなかった。そして笑われても続けてきた長谷川氏は、こうして“オンリーワン”になった。

彼の代表作は「DENサラダ」。

10年前から出しているが、同じように見えても少しずつ進化している。以前は塩昆布を細かく刻んで生野菜と和えていた。塩昆布はどんな素材にも会い、味を引き立てる。しかも昆布の着地点は日本料理の基本、出汁の味だ。

「これ、実は『ル・ゴロワ』サラダを目指しているんです。僕、あれが大好きで」。なんと! 第16、17話で紹介した『ル・ゴロワ』にはもう、10数年通っているほどの大ファン。焼く、茹でる、蒸すなど、野菜によって調理法を変えて和えたサラダは、フレンチからの発想だった。

さらに驚いたことに『ル・ゴロワ』の移転跡には長谷川氏が入る。

「移転のお葉書を頂いて、すぐに連絡しました。僕らも店を移転しなければいけない時期だったんですが、何より『ル・ゴロワ』を残したいと思って」。

フレンチの店を日本料理店に? しかもその面影を残しつつ?

どんな店になるか想像もつかないが、彼らには確かに共通するところがある。大切な素材を、きちんと味わってもらいたい。そのために最適な方法を考え手間を惜しまない。

新生『傳』は、『ル・ゴロワ』のように、あっと驚くことを成し遂げるような気がする。