リアルカスタマーではなく、「シリアスカスタマー!?」のためのワードローブ

モード逍遥 #3

最近ある展示会で若手バイヤーの話を聞いた。彼は日本のドレス服市場に危機感を抱いているというのである。

「イタリアへ買い付けに行くと耳の痛い話を聞かされます。いったい日本はどうなっているんだ、とね。彼らが言うには、1990年代まで日本人バイヤーは、コレは今売れないかもしれないけれどすごくうまく出来ている、といった製品を積極的に買い付けてくれた。そんなセンスの良さに共感して、イタリアは日本のセレクトショップと付き合ってきた。

それが今はどうだ。どの店も同じようにリスクの少ない服ばかりを買っている。これでは香港あたりの専門店に抜かれているぞ」

日本のセレクトショップがこだわりを持つ商品の買い付けからビジネス優先の品揃えに移行し始めたのは、都会の主要な駅ビルにインショップを出し始めた頃と一致する。

セレクトショップには“リアルクロージング”という勝利の方程式があった。それは店へ買い物に来る客の反応を即座にデータ化して売り場に反映させるもの。小売店だからこそ可能なリアルな市場リサーチだった。しかし、来店する顧客がこだわりを持つお洒落な人ばかりだった頃は、リアルクロージング・システムはうまく機能した。

だが現在、駅ビルのセレクトショップに来るのは、仕事帰りにストレス買いに走る若い客ばかり。次第に売り場は若向きの商品が多く並ぶようになる。そんな店ヘかつてのセレクトショップを知る40から50代の男性が訪れたら寂しい思いをするに違いない。

駅ビル内のセレクトショップはエントリー用という考え方もある。ここで若い客に店の良さを知ってもらい、彼らが成長したら丸の内や原宿の路面に店を構えるメンズドレスの名店へ来てもらおうという戦略。しかし若向きの商品開発とメンズドレスの路面店の品揃えに断絶があるために、この狙いは通用していないように思える。

香港の場合はどうだろう。