しゃべらない上司から学んだこと

心のふきだし #24

私が以前働いていた会社の上司は極端に無口な人だった。社内や車内、つまり仕事以外のことならよく話すのに、外の会社の人がいると、途端に無口になった。

あいさつに伺っても話さない。新年の挨拶は何人もの上司と一緒に行くのに、ほとんどみんな話をしないので私は毎回お尻まで汗をかいた。年の初めに苦痛な仕事だった。新年の挨拶以外にも、取引先に新規のご挨拶やお礼に伺う時もしゃべらない。

ふだんから、上司は仕事の詳細に口をはさまず、部下のやり方に任せるスタンスだった。
ほかの上司たちと、仕事を早く終えて会社の近くの雀荘に入り浸っていたのだ。昭和の穏やかな時代の象徴である。

こんな時代を経て、私はその後、中間管理職から経営する立場に変わった。私は“しゃべらない上司”にならなかった。それどころか中間管理職時代は、部下のする事がいちいち気になりチェックした。

あの頃「上司にしっかり見てもらってなかった自分は可哀想、私は部下をしっかり管理する上司になろう」と勝手に思い込んでいたのかもしれない。とにかく部下の一挙一動が気になり、指導して、「あれはいけなかった」、「こう言わなければいけない」とあれこれ口やかましい嫌な上司の典型になった。何人かが会社を辞めていった。

それは、私にとって、とても屈辱的だった。けれども、その頃の私は、わからなかった。「こんなに一生懸命言葉を尽くしているのにどうしてなんだろう?」、「どうして誰もついてきてくれないんだろう?」。そんな思いばかりを抱えていた。

それから何年も経ち、実際に自分が会社を経営する立場になって、いろんな思いや経験が自分の中で醸成されて、やっとわかった。

何事も片面だけではなく、両面から見なければわからないことがある。