未だ愛される、永遠の少女性「マチルダボブ」を解き明かす

そもそもボブは、数あるヘアスタイルの中で最も形がシンプルであると同時に、最もインパクトのある形です。そして、ボブは一見、どれも同じように見えます。でも実は、切る位置次第で最も多彩な印象を与えることができるスタイルなのです。


「マチルダボブ」とは、1994年にリュックベッソン監督によって描かれた映画『レオン』のヒロイン、マチルダの髪型のこと。

『レオン』はニューヨークのリトルイタリーを舞台とした孤独な殺し屋と少女の絆を描いた映画で、主人公のレオン役をジャン・レノが務め、ヒロインのマチルダは、今では大女優になった当時13歳のナタリー・ポートマンが務めました。そしてナタリー・ポートマンとっては、これが衝撃の映画デビュー作でした。

映画公開から20年以上たった今でも、日本のヘアサロンでごく普通に聞くこのワード。

なぜ「マチルダ」ボブなのでしょう。

それはあのマチルダに見え隠れする少女性と知性といった、相反するものを手に入れたい思いの表れなのだと思います。

そもそも日本語には「おかっぱ」という言葉があり、ボブとは同義語で使われています。でも「おかっぱ」という言葉から受ける印象はどうしても少女性だけが飛び出してしまう……。

ところが、これが「マチルダボブ」となった瞬間に、成熟した大人の女性がまとうような、影のある知性が加わった印象にガラリと変わるのです。

「マチルダボブ」の特徴は、前髪の長さは短く、そして量は少ない。そして、ギリギリ刈り上げない位置まで設定された襟足とそれをリップラインまでつなぐ強いストレートのアウトライン。

 

この種類のボブの印象を持つ人といえば、COMME des GARÇONSの川久保玲さんや1920年代にサイレント映画で活躍したルイーズ・ブルックスなどが挙げられます。実際このマチルダの髪型はルイーズ・ブルックスからインスパイアを受けて設定されたと伝え聞きます。

「マチルダボブ」を求める人が多くいる一方で、インターネットで「マチルダボブ」と画像検索すると、大半が「マチルダ」とは異なる印象のボブが出てきます。多くの人が「これがマチルダボブだ!」と思って作っても、そこに少女性と知性を存在させるのは難しいのでしょう。

つまり、それくらいボブは、切る位置や合わせ方によってさまざまな印象をもたらすことができるスタイルなのです。

「ボブが似合わない日本人はいない」と昔から言われています。

美容室でボブをオーダーするときは、今のあなたを取り巻く「感情」を説明するといいかもしれません。それが「本当に自分に似合うボブ」を手に入れるための強力なツールになるはずです。