「馬と暮らす」から!?と北海道へ引っ越す、あの『ル・ゴロワ』を味わう最後のチャンス

外苑西通りに面した建築会館の2F。話題になった国立競技場のすぐ近く。入り口にはハーブやかわいらしい木工の馬が置かれるなど、俗世間の騒動とは無縁。

「ル・ゴロワ」といえば、北海道の素材を使った大塚健一シェフの料理と、マダム敬子さんの魅力的な笑顔のもてなしが常連客を引き付けてやまなかった。

やっぱりマダムの笑顔があっての「ル・ゴロワ」

当たり前のことに心をこめて淡々とお店を続けてきた二人が、新しい場所でどんなサプライズを起こすのか、改めて期待したい。ファンとしてはちょっと寂しいけれど……。

最後の営業日には、今までこの店を応援してきたお客が招待された。集まった顔ぶれを具体的に紹介できないのが残念だが、あらゆるジャンルで活躍する個性的な方が多く、誰もが大塚夫妻を家族のように心配している。

店の奥にある半個室。にぎやかな落書き有名人たちが書き記していったもの。思わぬ人を発見したりするが、マダムはテレビを見ないので有名人と言われても、よく理解できていないそう。

それで思い出したのが、3年前に亡くなられた三國連太郎氏だ。2010年に大塚シェフが農林水産省表彰制度「料理マスターズ」を受賞した時、三國氏は闘病中で、外出を控えている状況にも関わらず、たっての希望で表彰式に出席し、大塚夫妻と記念写真にも収まったのだ。

スモークサーモンとカリフラワーのサラダ仕立て。これも素材は90%以上北海道から。 どんな料理にも野菜がたっぷり添えられているのが特徴。
スモークサーモンとカリフラワーのサラダ仕立て。これも素材は90%以上北海道から。
どんな料理にも野菜がたっぷり添えられているのが特徴。

「ル・ゴロワ」が99%北海道の素材を使った“北海道フレンチ”という独自のスタイルを築いたのは、二人が10年以上かけて北海道の生産者の元に通ったからこそ。アンディーブ、ホワイトアスパラガス、ミニトマト、チーズ、羊、牡蠣……。三國氏は表参道の店からの常連で、その経過を見守ってきたからこそ晴れ舞台に同席したかったのだろう。

マダムの敬子さんのレシピで作るグレープフルーツのプリン。他にも春先のイチゴのケーキや夏のブルーベリーのタルトなど、素材を活かしたケーキはテイクアウトの要望も多い人気もの。
マダムの敬子さんのレシピで作るグレープフルーツのプリン。他にも春先のイチゴのケーキや夏のブルーベリーのタルトなど、素材を活かしたケーキはテイクアウトの要望も多い人気もの。

私も審査委員としてその場にいたので、大塚夫妻を嬉しそうに見守っていた三國氏を思い出すと、今も目頭が熱くなる。

北海道に移転する理由は、敬子さんがずっと夢見てきた「馬と暮らす」生活を実現するため。敬子さんは北海道の畜産大学で学び、若い頃から馬に関わる仕事を希望していたが、いろいろ事情があって料理の道に入った。

お菓子作りを学び、パティシエールとしてホテルに勤務していた時に大塚シェフと出会った。いずれ二人で独立する際は、北海道に店を出し、そこで馬を飼おうと決めていた。しかし、何のつてもない二人に北海道は広すぎた。土地を探そうにも協力者も情報も資金もない。すべてが不足していた。

結局、もう少しタイミングを見てということで表参道に店を構えたのだが、その後「ル・ゴロワ」は大繁盛。予約の取れない店として評判にもなって、あっという間に10数年が過ぎてしまった。そんな長い、長〜い回り道を経て、2人は北海道・富良野で現在5頭の馬を育てている。

「この3年、私は東京と富良野を行ったり来たり。シェフは東京のお店で大変だし」と、マダムもつらそうだった。今年になって、いよいよ二人で北海道に店を移すことになった。詳細な場所は決まっていないが2017年6月にオープンを予定。大塚シェフは「薪で焼く肉に挑戦したい!」などと楽しそうに話す。

ちなみに、この場所には10月から「神保町 傳」が入る(これがまた、信じられないエピソード。改めて書きます)。それまでの6月11日〜19日、7月22日〜24日、26日〜31日、8月21日~28日は、「里帰りディナー」(こんなディナー聞いたことないけど……)として、昼、夜営業するそう!

東京で味わう「ル・ゴロワ」最後のチャンス!