創業者アウグスト・ホルヒの「レースは技術の実験室」という思想が、ル・マンの常勝チームを作った

ではアウディはどうだろうか? 他のメーカーと同じように、あるいはそれ以上に、モータースポーツとの関連性を強く意識しているといえる。アウディとモータースポーツが密接な関係であることは、アウディの創業者、アウグスト・ホルヒの「レースは技術の実験室」という思想が根底にあるからだ。アウディはモータースポーツに参戦することで、市販車にどんなフィードバックをしているか見ていきたい。

1980年のジュネーブモーターショーで発表された、アウディ独自の4WDシステム『クワトロ』。アウディは舗装路を速く安心して走るために4WDシステムを乗用車に採用した。それまで雪道や悪路を走破するための技術だった4WDを一般車に採用する必要性を証明するために、アウディはWRCに参戦することを決める。

悪路だけではなく一般公道も使用して行われるWRCで圧倒的な成績を残すことによって、今までとは違う全く新しい4WDのイメージを確立する。市販車に搭載する技術をモータースポーツに挑戦し、実績を残すことによってその優位性を示したのは、創業者のホルヒの思想を受け継いでいたからだろう。

現在ではほとんどのモデルに採用されている『クワトロ』は、アウディの代名詞ともいえるテクノロジーとして、今もなお進化し続けている。

1982: Audi clinches the Rally World Championship for Manufacturers
1982: Audi clinches the Rally World Championship for Manufacturers

アウディとモータースポーツといえば、1999年より参戦しているル・マン24時間レースを忘れてはいけない。2015年までの17年間で4度の1-2-3フィニッシュを含む13回の優勝を果たしている。アウディはル・マンに参戦することで培った数々の技術を市販車に搭載している。

例えば、現在のアウディラインナップの中で主力とも言える直噴エンジン『FSI/TFSI』はル・マン24時間レースで磨かれたエンジンだ。2006年にディーゼルエンジン『TDI』を搭載したアウディ R10 TDIが、ディーゼルエンジン搭載車として史上初めての勝利を挙げる。

Le Mans winning Audi prototypes (2000-2014)
Le Mans winning Audi prototypes (2000-2014)

現在は、ハイブリッドエンジンを搭載したアウディ R18 e-tron クワトロで参戦。このマシンには電気自動車技術『e-tron』や4WDシステム『クワトロ』、軽量化/高効率化を目指す『アウディ ウルトラ』に加えLEDライトを駆使したライティングテクノロジーなど、市販車に直結した技術が盛り込まれている。

創業者の「レースは技術の実験室」という思想が今も受け継がれているアウディ。モータースポーツで培った技術を市販車へフィードバックしているだけでなく、同時にモータースポーツとの結びつきを強くアピールすることで先進的なブランドイメージを作っている。

これからはアウディの市販車のみならず、モータースポーツ活動も注目してみてはどうだろうか。ちなみに、今年のル・マン24時間レースの決勝は6月18-19日に行われる。

Photo:Audi AG