トゥールビヨンを「買える」機構にしてしまったタグ・ホイヤーの新作カレラ、167万5千円の価格破壊!?

なにしろ機械式狂いなもので #15

1月にジュネーブで開催された新作時計発表会で感じた、ベーシックでリアル・プライスなモデルと、富裕層向けの超高額な複雑時計との二極分化は、3月のバーゼル・ワールドでも変わらぬ傾向であった。

リーマンショック以降、時計業界の良きパトロンであった中国の経済事情が影を落としているのだろう。バーゼル発表モデルは、ジュネーブよりも低価格路線であることを強く感じた。むろん夢のある複雑時計の良作も数多く登場している。

そうした中、《タグ・ホイヤー》の新作が、何かと物議を醸していた。左のモデルが、それだ。

左:タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー 02T /ケースはモジュール構造。ミドルケースをブラックとしバイカラーに仕立てた。ベゼルには、タキメーターを刻む。
右:モンツァ クロノグラフ/12時位置にあるロゴは、1976年当時の旧タイプを使用。インデックスの夜光塗料も経年変化したような淡橙色とし、ヴィンテージ感を添える。

マニアな機械式時計ファンでなくとも、多くの人がその名を知るビッグネームな時計メゾン。創業当初からクロノグラフを得意とし、モータースポーツと深く結び付き、多くの名作にしてロングセラーを世に送り出してきた。

左の新作『タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー 02T』も、1963年に伝説のカーレース「カレラ・パンアメリカーナ・メキシコ・ロードレース」にインスピレーションを受けて誕生した『カレラ』をルーツとするクロノグラフだ。そしてさらにこのモデルは、6時位置を注視すればお気づきであろう、トゥールビヨンも備えている。

トゥールビヨンとは、時計精度を司るテンプ、ガンギ車、アンクルから成るエスケープメントを納めたキャリッジが回転し、重力が時計精度に及ぼす悪影響を分散化するメカニズム。1986年、それまで懐中時計にしかなかったこの機構が、初めて市販モデルの腕時計に搭載されて以来、製作するのが特に難しい複雑機構を代表する一つとして、機械式時計ファンの憧れの存在であり続けている。

高額モデルの象徴する機構だとも言い換えられるだろう。事実トゥールビヨン搭載機は、500万円オーバーが常識であった。

それをタグ・ホイヤーは、このモデルで覆した。精巧なメカニズムを持つクロノグラフとトゥールビヨンとを組み合わせながら、167万5,000円(予価)という驚異的な価格で実現したのだ。複雑時計の、これは価格破壊だ。