京都通への道は近からず。名バーテンダーが伝授する古都の魅力を知るための5か条~尾崎浩司(Bar Radio)Vol.2

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東京のバーの歴史を変えた名店、バーラジオのオーナーである尾崎浩司さん。京都に自宅を構え、「京都を簡単に知ろうなんて、虫のいい話なんですよ(笑)。本当に知りたかったら、自分で通って、自分で調査しなさいと言いたい」と語る。

そんな尾崎さんが、今回は特別に京都通になるための近道5か条を教えてくれた。1つ目に京都人に惚れさせる極意を説いた尾崎さんが教える、残り4か条とは……?

 

2、店との付き合い方を体得する

一見さんお断りや、予約制の店など観光客にはハードルの高い店も多いのが京都。どうすればいい店巡りをすることができるだろうか。

「観光客の方でもよく行く一保堂や有次などの有名店でいい買い物をするにはどうすればいいか。ベテランの店員が空くのを待つんです。いい店員はいい顔つきをしています。そういうのを見分けられるようにならないと。そうすると、いい説明をしてくれるし相談に乗ってくれます。

買い物をした後、“この辺で美味しいコーヒー飲めますか?”と聞くと、実にいいお店を教えてくれたりしますよ」

古書店にも行くことが多いという尾崎さん。特別に決まった店というよりは、佇まいのいい店をふらりと覗くことが多いとか。

「京都はいい古い本が安く買える店がまだあるんですよね。和綴じで、手すきの紙を使い、活版印刷で刷られた本が数百円とか。店に入るときは“こんにちは”と挨拶すること。古本屋さんは比較的慌ただしくないので、ご主人に話を聞くと色々教えてくれたりします」

そしてもちろん、尾崎さんは京都のバーについても詳しい。

「いいバーは紹介制のところが多いんですよね。四条で100年やってる元禄というバーがあります。そこはオーナーの女性が着物でシェイカーを振るんです。かっこいいですよ。教える価値のある人には、私の店へ来て尋ねてくれれば教えて差し上げます。そうしたら私からお店に連絡して、紹介状も書きますので。京都のいい店はそうやって丁寧につきあわなければいけません。手順をふんで礼を尽くせば、それ以上に返してくれる、それが京都です」

かくもハードルの高い京都。それだけにそこを乗り越えればそこにしかない世界を体験できる。一方で、観光客でも気張らずに行けるバーも知りたい。そんなリクエストにも尾崎さんは快く答えてくれた。

「バーならK6は間違いないですよ。バーテンダーも多いから、観光客が突然行っても快く迎えてくれます。タクシーに店名を言えば、まず店の前まで届けてくれる有名なバーです」

Bar K6
京都市中京区二条通木屋町東入東生洲町481
Tel.075-255-5009

 

3、古都の退廃美を知る

「京都には、古都ならではのデカダンスというか、退廃美がある。それを理解しないと味わい尽くせません。どういうことかいうと、京都は国宝がそこかしこにありますが、資金が潤沢じゃないため美術館が古びていたり、作品が壁からはがれていたりということがよくあります。それはかつて栄華を誇った歴史の名残であり、沈みゆく美なのです。

今は派手な若冲が人気ですが、京都の美は円山応挙や雪舟、長谷川等伯のような渋くて地味な作品にこそあると思います。そうした一見、華やかさには欠けるけれど本当に美しいものにこそ、京都の美の真髄はそこにあるのです」

と、尾崎さんは語る。時間とともに朽ちていくものの放つ儚さと美しさこそが京都の魅力のひとつなのだ。

「例えば、利休が作った茶室、待庵は1畳半しかない質素な建築ですが、国宝になるには理由があるんです。質素の極みとも言える小さな茶室で、わからない人がみたら単なる田舎家。けれどそれは最高の田舎家なんです。京都には、そういった美を堪能することができる場所がそこかしこにあります。三千院も、そういう意味で美しい場所といえると思います」

待庵(妙喜庵)
京都府乙訓郡大山崎町竜光56
*拝観にははがきで事前に申し込みが必要。

三千院
京都市左京区大原来迎院町540