熟成するほど良くなるのは、ワインと女だけじゃない!? 日本酒の一生も女の一生に似ています

何故って、ワインの熟成と美味しさの相関関係については広く知られている話でございます。良い赤ワインは熟成することによって益々香り高く、まろやかに深く多様で複雑な味わいを醸し出す。若い赤ワインの単純で平坦な味わいとは比べモノにならない濃厚さ。

ワイン市場を見てもそのことは一目瞭然。完璧な状態で時を刻んできたヴィンテージには高い値がつき、多くのワイン愛好家の垂涎の的。そんな高値、もとい高嶺の花であるヴィンテージワインと同様に、女性も齢を重ねるのがいいと言う。

まさか私を口説いていらっしゃる? なんて色っぽい勘違いにしばし酔ってみたりして。どんなに高価な美容液より効果てきめんなセリフではないですか。

ところで一方、日本酒の世界。こちらでの相関関係は真逆が定説でございます。「新しい」が良いとされる向きがある。でもね、そんな日本酒にも「熟成」のめくるめく官能美があるってことを知ってほしいと思うのです。

そもそも「新しい」お酒とはなんなのか?

いろんな基準がありますが、ここでは搾りたての「新酒」を指すことと致します。文字通り、新しいお酒。日本酒はたいてい寒仕込みでありますので、彼女のお誕生日は冬と推測されます。色合いは爽やかなうすみどりで若葉マークが初々しい赤ちゃん。荒々しい波が岸辺を打つザ・日本海の音を聞きながら産声を上げる。オギャーオギャーと声も大きく、健康で元気溌剌な様子です。

しかし、この「新酒」はそのまま大人になるというわけではなく、通常(例外は多々ありますが)シャバに出るまで二回の「火入れ」というシツケを受けることになります。火入れとは、60~65度くらいの温度でお酒を加熱処理する作業です。

一回目の「火入れ」が搾りたての生酒に含まれる酵素の働きを止めるため、二回目の「火入れ」は瓶詰めの段階に殺菌処理のためにされるものでございます。箱入り娘は数か月にわたりこのようなしつけを受け、虫よけもきっちり施された段階で、華々しく社会デビューを迎えるのです。

デビューしたての新酒は、まるで新入社員のようにある意味初々しく可憐であり、ある意味固く緊張しています。でもその汚れのない立ち姿が、なんとも人を和ませる。「おはようございます!」と登場すれば、待ってましたとなかりに歓迎ムードが漂うのです。

その場に佇む元・新人メンバーには目もくれず、我先にとみんな新しいお酒に手を伸ばす。どうにも今年の新人の出来具体が気になるってことでしょう。そんな場面を苦々しく見つめるのが、お局様と呼ばれる古株の主。私も〇十年前はああだった……。そんな恨み節も聞こえてきそうな新旧対決、勝敗はあまりにも明白です。

しかし私は声を大にして言いたい。このお局様のような日本酒が持つ、深くてまる~い魅力ってやつを。まこと、日本酒の一生は女性の一生に似ています。(続)

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