初の自社製ムーブメントを搭載した『ムッシュー ドゥ シャネル』のモダンな美しさ!?

なにしろ機械式狂いなもので #14

スイスの時計産業は、分業制とすることで発展を遂げたという歴史を持つ。ムーブメントやケース、ダイヤル、針など時計を構成する要素それぞれに専門とするメーカーがいくつもあって、時計ブランドは企画やデザインを決めて各社に発注し、最終的な組み立てを行うことで自社製品としていた。

スイスは、国全体を巨大な時計工場とすることを政策に掲げ、一大産業へと成長させたのである。

このビジネス・モデルは、今もスイスで継続されている。スイスには、実に多くの時計ブランドが存在するが、その大半は、外装やムーブメントを専門メーカーから購入しているのだ。そして異業種からの参入を容易にしてもいる。多くのファッションブランドが、時計をラインナップするのは、これが理由だ。

一方で早くから自社ですべてを製造する高級時計ブランドも、少なからずあった。また、機械式時計の価値が再び認められ、急成長を果たした1990年代後半以降、ムーブメントを自社製造、あるいは自社開発するブランドが、数多く登場している。同じ機械で見た目だけが違う、のではなく、デザインもムーブメントもオリジナルとすることで他社との差別化を図り、競争力を高めるためだ。

こうした自社製ムーブメントを持つ時計ブランドを、時計業界では「マニュファクチュール」と呼ぶ。

フランスを代表する高級メゾン《シャネル》は今年、このマニュファクチュールの仲間入りを果たした。バッグや香水、ジュエリーなど多彩なシャネルのコレクションに時計が登場したのは、1987年のこと。伝説的な香水『シャネル N°5』のボトルやパリのヴァンドーム広場の形をモチーフとした縦長八角形のフォルムを持つレディスウォッチ『プルミエール』である。

そして2000年、ケースとブレスレットをすべてハイテク セラミックで作り上げた『J12』で、時計市場へ本格的な参入を果たした。その後、多彩にバリエーションを増やしたJ12は、アイコニックな存在となり、今もシャネルのウォッチコレクションを代表する。