50年後のモード界には、もうスターデザイナーなんていない!?

砂漠のような東京でも…週刊ファッション日記 #13

かつてデザイナーはファッションの世界において頂点をなす存在だった。

オートクチュール(高級注文服)全盛期のマリアノ・フォルチュニィ(1871~1949)、フレデリック・ウォルト(1825~1895)、ポール・ポワレ(1879~1944)、エルザ・スキャパレリ(1890~1973)、クリストバル・バレンシアガ(1895~1972)から指を折り、プレタポルテ(高級既製服)の時代に入って、ガブリエル・シャネル(1883~1971)、クリスチャン・ディオール(1905~1957)を経て、イヴ・サン=ローラン(1936~2008)に至るまでデザイナーの黄金時代があった。

彼らはファッションの神殿に祀られる神であった。神はいつしか地上に降り立ってスーパースターになった。90年代にはデザイナーという呼び名に代わって、クリエイティブ・ディレクター(アーティスティック・ディレクター)と呼ばれる役職が登場した。

これは、「グッチ」「ルイ・ヴィトン」「ディオール」といったラグジュアリー・ブランドが創出した新しいタイトルだった。単なるプレタポルテのデザインではなく、そのブランドのその時における方向性を決定するのがクリエイティブ・ディレクターなのである。

例えば「この香水の香りは我々のブランドにはふさわしくない」という判断をしたりする。あるいは50年前にベストセラーとなったハンドバッグ(いわゆるブランドのアーカイブ)を現代にふさわしい形で復活させたりする。

極端な場合は、自分のブランド(シグニチャー・ブランド)は手掛けずにブランドに雇われて、そのブランドのクリエイティブ・ディレクターになるようなデザイナーも登場するようになった。例えば、ニコラ・ゲスキエール(1971~)のようにシグニチャー・ブランドは手掛けずに「バレンシアガ」のクリエイティブ・ディレクターを経て、現在は「ルイ・ヴィトン」のクリエイティブ・ディレクターに専念しているような人物もいるのである。