倉俣史朗の名作、寿司屋の「きよ友」は2億円で香港の現代美術館M+に買い取られる!?

レストラン熱中派 #13

「きよ友」は1988年、倉俣史朗が手掛けた寿司店だ。ファサードはブルー。大きな曲線を描いた外壁に覆われ、中は見えない。なんの店だか想像もつかないが、店内に入ると驚きの空間が広がる。

(c)ナカサアンドパートナーズ
(c)ナカサアンドパートナーズ

手前にテーブル席、奥にカウンター席があり、その間をガラスのパーテーションが仕切る。細い脚の椅子、石のカウンター、天井は杉の木で見事に弧を描いたドーム状。そのひとつひとつがファンにとってはたまらない、クラマタ作品だ。

「きよ友再生プロジェクト」はハードとソフト、両面から進めなければならなかった。ハード面は、数年間放置された店内を営業できるように修繕すること。ソフト面はスタッフの条件の合意などだ。

まず、店内の修繕には、当時のスタッフを集めなくてはならない。しかし、完成から20年近くたっているので、当時の職人たちは70歳を超える高齢。仕事を辞めた人、あるいは続けているが全員のスケジュールが確保できないなど、難題は多かった。

人材だけでなく、素材も手に入らないものも多かった。クラマタ作品に欠かせない硝子だが、パーテーションの一部にひびが入っていた。これを作り直したいといっても、5cmの厚さのその硝子を作れる工房はもうないのだという。結局、オリジナルを残すことになったが、たった20年でも再生できない技術が多いことも思い知らされた。