生ける伝説となった天才時計師フランク ミュラーの新作2点、古典とアヴァンギャルド

なにしろ機械式狂いなもので #10

前回、近年の時計業界の一つの傾向として、原点回帰を図る時計メーカーに対し、ジュエラーやファッションブランドなどが時計でより斬新な個性を発揮していることを揚げた。そうした非時計専業ブランドと同じく、大胆なアプローチを見せているのが、新興の時計メーカーだ。

彼らもまた、回帰すべき原点を持たないから、デザインやメカニズムでこれまでになかったクリエーションを発揮して、機械式時計ファンの耳目を集めている。

原点回帰する老舗時計メーカー。斬新さで勝負する非時計ブランドや新興時計メーカー。この構図を一つのブランドで構築しているのが、《フランク ミュラー》だ。その創業者はブランド名と同じ、生ける伝説となった天才時計師フランク ミュラーである。

1979年にジュネーブ時計学校を首席で卒業した彼は、メーカーには属さない独立時計師としての道を歩み始めた。そして1980年代初頭、このコラムで幾度か述べた、クォーツショックに見舞われたスイス機械式時計冬の時代に、それまで懐中時計にしかなかった幾つもの複雑機構を腕時計で適え、さらに複数の複雑機構を自在に組み合わせた時計を次々に発表し、天才の名を欲しいままにした。