誕生して85年の大ロングセラー時計、ジャガー・ルクルト「レベルソ」の新モデル

なにしろ機械式狂いなもので #6

時計界には、50年以上作り続けられているロングセラー・モデルが、少なからずある。そしてそれらは必ず、時計好きなら遠目からでもそのモデルだと分かる、機能的で美しいデザインを兼ね備えている。

もちろん、どれも誕生当時と全てが同じ……というわけでは、もちろんない。時代に合わせて、ディテールや素材、仕上げ、サイズ感、そしてムーブメントに手を加え、進化させてきたからこそ、時計ファンからの賛同を受け続け、ロングセラーなアイコニック・モデルとなったのである。

《ジャガー・ルクルト》の『レベルソ』は、そんなアイコニックなモデルのひとつ。ファーストモデルは1931年に生まれ、今年で誕生85周年を迎えた、ロングセラーな名作だ。

レベルソの一番の特徴は、反転式のケースにある。上下に三筋のゴドロン装飾を刻んだ、アール・デコの影響色濃い端正なレクタンギュラー(角型)ケースは、右にスライドさせるとキャリア(台座)からカチリと外れる仕掛けに。

さらに右に動かせばケースをクルリと回転させられ、そのまま左にスライドすれば、再びキャリアにカチリと納まる。この特殊なケース構造は、ポロ競技を趣味とするイギリス人将校からの「試合中でも着けられる時計を」とのオーダーから生まれた。衝撃で最も破損しやすいダイヤルを覆うガラスの風防を、ケースを反転することで保護するとのアイデアだ。

アール・デコを規範としたシンプルでクラシックな外観を持つレベルソは、実はスポーツウォッチの元祖でもあったのだ。こうした語るべきエピソードがあることも、レベルソがアイコニック・モデルとなった理由の一つ。どんな世界でもマニアは、何かと語りたがり屋が多いのだから。

そんなレベルソが、85周年を迎えるに当たりフルリニューアルされた。SIHHで発表された新生『レベルソ・クラシック』を見ると、実に慎重に手を加えられたのだと分かる。

左がラージ、右がミディアム。サイズ以外はデザインも仕上げも、ムーブメントも同じだ。ラージは、ケースを反転させるためにスライドさせた様子。
左がラージ、右がミディアム。サイズ以外はデザインも仕上げも、ムーブメントも同じだ。ラージは、ケースを反転させるためにスライドさせた様子。

その外観は、よほどのレベルソ・マニアでなければ、旧作との違いが判別できないほど。ケースのフォルムと同じく、アール・デコを規範とするレイルウェイとアラビア数字とが居住まい正しく並ぶダイヤルのデザインは、そのまま継承されているし、剣型の針の形も同じだ。

ラインナップが増えるにつれて、いくつものサイズ違いが生まれたケースは、スモール・ミディアム・ラージの3種類に整理されたものの、それぞれのサイズ感は既存モデルと近似である。

一方で、ストラップを留めるラグをややスリムに整え直して着け心地を高め、ケース全体の質感も向上させている。

外装の変化が極めてわずかなのは、それまであったレベルソのデザインの高い完成度を証明する。見た目の違いはフルリニューアルとは呼べないブラッシュアップ。変わったのは外ではなく中身、すなわちムーブメントだったのである。

ジャガー・ルクルトは、時計に関するほぼすべてのパーツを自社で製造する名門メゾン。その内製率はスイスのトップクラスで、すべてのモデルに自社製のムーブメントを搭載する。

旧作のレベルソも、むろん自社製ムーブメントを積んでいた。それはクラシックなレベルソに相応しい手巻き式だった。しかし生まれ変わったレベルソ・クラシックには、より現代的で実用的な自動巻きムーブメントが搭載されたのである。

角型のケースは、丸型と比べてムーブメントを納めるスペースが少なく、当然搭載するムーブメントも小型でなければならない。ゼンマイを巻き上げるローターが必須な自動巻きは、その分大きさも増し、それゆえ既存のレベルソは手巻きを採用してきた。

技術力に定評のある名門メゾンは、角型ケースに無理なく納まり、巻き上げ効率にも優れる自動巻きムーブメントを、新しいレベルソ・クラシックのために一から作り上げた。

外観にはほとんど手を加えず、中の機械を大きく進化させたレベルソ・クラシックは、さらなる実力を内に秘め、この先も末永く機械式時計ファンの心を捉え続ける。

 

商品情報:

左:レベルソ・クラシック・ラージ
自動巻き、ステンレススティールケース。縦45.6×横27.4mm。予価102万5,000円。今夏発売予定。
右:レベルソ・クラシック・ミディアム
自動巻き、ステンレススティールケース。縦40.1×横24.4mm。予価91万5,000円。今夏発売予定。

問い合わせ先:ジャガー・ルクルトTel.0120-79-1833

 

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