アトリエを撮影した写真を見たあとは、モランディの絵がますます好きになってくる

20世紀を代表する画家の一人ともいうべきモランディの大規模個展が日本で開催されるのは17年ぶりだ。実は2011年にも今回とは別の企画として開催予定だったが、それは東日本大震災のため直前で中止となった。

《静物》 1948年
トリノ市立近現代美術館、グイド・エド・エットーレ・デ・フォルナリス財団
© by courtesy of the Fondazione Torino Musei

この静謐で平穏で清貧な絵を前にして、人々はむしろ雄弁になる。

意識的、禁欲的。具象、抽象。稚拙、巧妙。絵的、詩的。
セザンヌ、マティス、ピカソ、ブラック、モンドリアン、キリコ、バルテュス、ベーコン……。
宇宙の力学。世界の秩序。数学的な配列。
アッシジの聖フランチェスコ……。

《静物》 1946年 国立近代美術館(ローマ)
© Roma, Galleria Nazionale d’Arte Moderna e Contemporanea, by permission of Ministero dei Beni delle Attività Culturali e del Turismo

モランディの絵には繰り返し登場するオブジェがある。たとえば、この四角い土台付きの青い縞模様の小さな花瓶もそうだし、赤い縁の白いカップがそうだ。この絵では、青の垂直と赤の水平が衝突し生まれる緊張感がいい。

先に挙げた1948年の《静物》に登場する逆さにした漏斗(じょうご)と円柱を組み合わせたオブジェも彼のお気に入りで、これもしばしば登場する。

絵の中に同じオブジェが繰り返し登場するけれども少しずつ位置が変わっていたり、ほかとの関係性が変化し、異なる均衡を保っていたりする。

構成を少しずつずらして描かれる様子を、この展覧会ではヴァリエーション=変奏曲ととらえて展示しているのだが、それに着目して眺めていくことはモランディへの理解を深めることになると思うものの、ますますこの画家が仕組んだ迷宮へ深く入り込むことにもなる。どちらも楽しみであるに違いない。

カーサ・モランディ(モランディの家)
photo © Paolo Ferrari, Bologna

モランディの展覧会を見ながら、彼の作品と彼のアトリエに多くの写真家が惹きつけられたことを思い出し、それぞれの写真家たちがキャンバスでなく、フィルムに残した記録をもう一度、さらってみようと思った。