メンズ・グルーミングの拡大と、編集者・岸田一郎

「女もすなる化粧というものを男もしてみんとてするなり」という感じで始まったメンズ・グルーミングの世界が本格的に売り場に表現されたのは2003年9月にオープンした新宿の伊勢丹メンズ館だろう。

それから13年が経過するが、経済産業省生産動態統計調査によると男性皮膚用化粧品出荷額は2001年に111億円だったものが2013年には222億円になっており、倍増。今後はさらに拡大が見込まれるマーケットである。

このメンズ・グルーミングを本格化させた立役者は草食系男子だろう。あまり異性は好きではないのに、当たり前のようにスキンケアに余念がなく、眉のお手入れも欠かさないし、時には眉をそって、ペンシルで書いてみたりもする。言うまでもなくヘアカットは青山あたりの有名ヘアサロンに通っている。

このメンズ・グルーミングを索引するもうひとつの旗頭は、雑誌『レオン』がチョイワルオヤジと命名した50代、60代の女好きのオヤジたちである。金はあるからなんとかしてプロではないアマチュアの女性とお付き合いしたいということで、金にあかせてメンズフレグランスを浴びて加齢臭を消し、眉を整え、肌に潤いを与えるべくスキンケアに余念がないオヤジたちである。

この「チョイワルオヤジ」というコンセプトを発見した岸田一郎、『LEON(レオン)』創刊編集長は歴史に残る編集者だと思う。岸田氏は、独立のための社員の引き抜きに対して会社(主婦と生活社)から睨まれ退社し、2007年3月に男性誌『Zino(ジーノ)』を立ち上げるが2008年6月号で資金が続かず休刊。

LEONの秘密と舞台裏
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2014年9月には「やんちゃジジイ」(やんジイ)をコンセプトにセブン&アイ出版から男性誌『MADURO(マデュロ)』を立ち上げるが、写真週刊誌にスキャンダルを報道されたのが原因なのか同誌編集長を昨年退任している。

『MADURO』では、「やんちゃジジイ」とターゲットが60歳アップになったために(岸田氏は1951年4月5日生まれ)、ED薬の特集も行うなど“新境地”を見せていたのである。なるほど金にあかせてプレゼント攻撃、高級ディナー攻撃を仕掛け、グルーミングで男を磨いても、肝心のポイントがダメでは無駄だろうという、実になんとも「リアル」な考え方である。

岸田氏は大阪市都島区出身なのであるが「リアル」さを彼の出身地と結びつけてはいけないだろうか。このあたりのちょっと行き過ぎた「リアル」がラグジュアリー・ブランドなどからは敬遠されていたとも仄聞している。

岸田氏に関する記述はWikipediaも参考にしているが、このWikiは実によく調べてある。どう考えても、岸田氏本人が記述しているとしか思えないのだが(笑)。もし自分で「編集者としての功績」という項目を書いたのであれば、そこが岸田氏の岸田氏たる所以であろう(笑)。

メンズ・グルーミングのことを書こうと思ったのだが、とんだ脱線原稿になってしまった。とにかく岸田一郎のファンなのだ。昭和を代表するコメディアンの三木のり平(1924-1999)に似ていて何をしても憎めない男なのだ。

また復活してほしいものである。

Image Photo:Nejron Photo/shutterstock

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