機械式とクォーツのハイブリッド時計!? ピアジェ エンペラドール・クッション

なにしろ機械式狂いなもので #4

《ピアジェ》と聞いて、ダイヤモンドが煌めくジュエリーウォッチを思い浮かべた読者は、多分バブル世代。事実ジュエリーウォッチを得意とするメゾンだが、同時に優れたムーブメント製作でも時計界では名を馳せている。

そもそもの始まりがムーブメント会社であり、名だたるスイスの時計メーカーの機械部分を支えていた。とりわけ薄型ムーブメントに関しては、いくつものワールドレコードを樹立していて、その分野のパイオニアでもある。ピアジェの優れた技術力は、機械式だけに留まらず、クォーツでも発揮されてきた。

このコラムの第1回で触れたように、1969年に腕時計で初めてクォーツ・ムーブメントを実用化したのは、日本のセイコーだった。しかしそれに先駆け、1966年にスイス・ヌーシャテルにあるCentre Electronique Horloger(CEH/電気時計研究)が、クォーツ腕時計のプロトタイプを製作している。

そして1970年にはCEH主導の下、スイス製初の量産型クォーツ・ムーブメント「ベータ21」が誕生。この開発に、ピアジェは大きく関わっていたのだ。さらに1976年には、ピアジェ独自のクォーツ・ムーブメント「7P」を開発。これは機械の厚さがわずか3.1mmという当時のクォーツ・ムーブメントの世界最薄だった。クォーツでも薄さにこだわるのが、ピアジェらしさだ。

ゼンマイを動力源とする機械式ムーブメントは、その巻き戻る回転力をいくつかの歯車(輪列)を介し、伝達する。ゼンマイの巻き戻る速度は、左右に等速で振れるテンプが調速し、その振動によって進む・止まるを繰り返すアンクルとガンギ車から成る脱進機が制御して、正確な時の刻みへと変換される。

対してクォーツ時計は、電気でモーターを動かし針を進める。そしてモーターの速度を制御しているのは、クォーツ(水晶)を備えるIC回路だ。水晶は電気が流れると等間隔で振動する性質を持つ。その1秒分の振動回数をIC回路が検知して、モーターを正確な速度で回して運針する。

これら機械式とクォーツの仕組みを、ピアジェはSIHHで発表した新作「ピアジェ エンペラドール・クッション」で合体させた。自社製初にして当時世界最薄だったクォーツ・ムーブメント7P誕生40周年の記念モデルで、新開発ムーブメント「700P」を搭載。

ダイヤルの9時位置にあるのがゼンマイを巻き上げるマイクロローターで、その右上にあるのが発電と運針を兼ねるジェネレーター。
裏蓋側にもジェネレーターの姿を見せ、右隣にゼンマイの巻き上げ残量を示すパワーリザーブ計を置く。

そのダイヤルには、ゼンマイを巻き上げるプラチナ製の自動巻きマイクロローターが見えている。すなわち新ムーブメント700Pの動力源は、機械式と同じくゼンマイで、輪列によって巻き戻る力が伝達される。しかしゼンマイが巻き戻る速度を制御するのは、テンプやアンクル、ガンギ車ではなくクォーツを備えるIC回路。ゼンマイの力を伝える輪列は、磁石とコイルとを組み合わせたジェネレーターにつながり、これを回して発電する。

その電気でクォーツとIC回路が働いて、ジェネレーターの回転速度を毎秒5.33回に制御。ジェネレーターには、動力伝達とは別に針を動かすための輪列も備わり、クォーツとIC回路で制御された速度で、正確に運針する。つまり動力とその伝達は機械式、制御はクォーツとしたハイブリットというわけ。

実は、この仕組みは1972年にスイスで特許が取得されたものの、当時の技術では実現できず、長い間忘れ去られていたものだった。それをピアジェが掘り起こし、現代の技術で実現したのだ。同じようにクォーツとIC回路で制御する機械式には、セイコーが1999年に開発した「スプリングドライブ」がある。

しかし今回のピアジェによるハイブリット・ムーブメントは、発電に自転車がタイヤで回す発電機と同じ仕組みのアナログチックなジェネレーターを用い、その回転で発電と運針とを同時に行っているのが、大きな相違点。

これもまた機械式時計の新しいカタチであり、時計ファンの興味を大いにそそるのである。

 

商品情報:

ピアジェ エンペラドール・クッション 

限定118本。自動巻き発電式クォーツ、ホワイトゴールドケース。径46.5mm。予価865万円。6月発売予定。
問い合わせ先:ピアジェ コンタクトセンター Tel.0120-73-1874