ワインあるよ。赤と白、混ぜればロゼの3種類!?

レストラン熱中派 #4

今回はワインのお話。金沢には大好きな寿司屋があるので10年ほど前から、毎年数回は通っている。

寿司屋めぐりにも飽きて人づてに行ったステーキ屋さんが超個性的だった。店名は「ひよこ」……。焼き鳥屋ではありません。私が行った当時はコースのみで7,000円。肉はヒレで、ライスはつかない。なんとも謎だらけだったが、とにかくタクシーに乗り行先を告げると「あ~、ひよこさんね」とすぐに反応してくれた。

無事に店の前に到着したが……、それは黒いトタン張りの小屋で、窓さえ見られない。恐る恐る扉を開けるとカウンターの向こうにおじさんが一人、テレビを見ている。帰りの飛行機の時間に間に合うよう、少し急いで欲しいとだけお願いした。

飲み物を注文することになり「ワインはあるんですか?」と聞くと「あるよ。赤と白、混ぜればロゼの3種類! ガハハ」と豪快に笑った。「ロゼ、注文する人いるんですか?」「いるよ~、けっこう旨いから」と少しドヤ顔。ワインブームの時期だったこともあって、これだけへなちょこなリストで堂々としているおじさんに感動した。でも、私は白を注文したけど。

時は流れ、つい先日のこと。札幌に行く仕事があったので、夜は絶対に「モリエール」と決めていた。この店のシェフ、中道博氏の料理はシンプルで王道を外れない。美しいけれど、やりすぎない。みんなが素直においしいと感じる。そんなおおらかな料理だから、ワインに関してソムリエの蒲地健氏は少し遊びを仕掛ける。

この日は厚岸のカキに、なんと赤ワイン。それもガメイという個性的なワインを合わせてきた。しかも「これが合うんです」と黒胡椒をカキに一振り。なるほど口に含むといきなりきゅっと引き締まる感覚。そこにガメイをひと口。見事に荒々しさが飛んでいる。あ~、こんなにクールなカキの味わい方は初めて!

さらに驚いたのは、メインディッシュの蝦夷鹿のロティ。この日の蝦夷鹿は最高だった。そこにフランスのガスコーニュ地方の赤をサラッと出してきた。正直、ちょっと期待はずれ。エレガントなワインだけど、この溌剌とした蝦夷鹿とは距離がある。私の表情を読み取った蒲地氏は「では、これを」とボルドーの甘口、貴腐ワインを取り出し、グラスに足した。

ベテランソムリエの優雅なサービスにうっとり。でも、気がつくと、赤に貴腐ワインのサプライズ!

「え?」つまり、赤と白のブレンドだ! これを“ワインをおいしくするため”と言ったらワイン関係者は激怒する。それは双方のワインに対する、生産者に対する冒とくだ、と抗議の声も上がるかもしれない。でも、私は味わってみて自然に感じた。「料理とワインが寄り添う手助けをしている」と。

それにしても、蒲地氏の大胆な発想&行動には驚かされた! 誰がやってもいいというものではない。これこそ、酸いも甘いも飲み分けた大人に許される遊びではないだろうか。