インクルーシブデザインが21世紀の社会を変える!?

21世紀のデザインの潮流は、特別に教育を受けたデザイナーがユーザーや企業や社会のためにデザインをするという“Design for”の時代から、デザイナーとユーザーの間の垣根が低くなり、デザイナーはつなぎ役・引き出し役・まとめ役としてユーザーとともにイノベーションを創出する“Design with”の時代へ移行している。

綾瀬ひまわり園のアーティストが描いた絵柄を使ったテキスタイルでつくったクッション。デザイン:ライラ・カセム、制作:平田典子、イラスト:綾瀬ひまわり園アーティストの皆さん

綾瀬ひまわり園のアーティストが描いた絵柄を使ったテキスタイルでつくったクッション。
デザイン:ライラ・カセム、制作:平田典子、イラスト:綾瀬ひまわり園アーティストの皆さん

 

エクストリームユーザーやリードユーザーはどこにいるのか。どうやって手を組むのか。2000年代後半までは、ファッションエディターやデザイナー、建築家は目利きの受け手でもあり、消費のメインストリームをリードするエクストリームユーザーであった。でも、彼らはもともと情報の送り手側にいる人間で、排除された人たちではかった。まだ彼らは本当のエクストリームユーザーではなかったのかもしれない。

ライラ・カセムが綾瀬ひまわり園のスタッフと知的障害をもつアーティストとともに開発したデザイン商品の数々。ライラ・カセムはグラフィックデザインとインクルーシブデザインの方法論の融合を実践的に研究するデザイナー。綾瀬ひまわり園に足繁く通い、障がい者の自立に貢献するデザイン商品づくりを手がけている。

ライラ・カセムはグラフィックデザインとインクルーシブデザインの方法論の融合を実践的に研究するデザイナー。
綾瀬ひまわり園に足繁く通い、障がい者の自立に貢献するデザイン商品づくりを手がけている。原稿冒頭に出てくる博士論文の著者はライラ・カセム。

 

イームズチェアが売れても、アトリエ系建築家の個人住宅がいくら増えても、日本にメインストリームを変革するイノベーションは起こらなかった。GoogleやSNSに匹敵するような、社会を変えるイノベーションの核となる究極のニーズを教えてくれるエクストリームユーザーは、もっともっと辺境にいるのかもしれない。檻の中にいたレクター博士のようにね。

 

(※注)『インクルーシブデザインという発想―排除しないデザインプロセス』(ジュリア・カセム著/2014年/フィルムアート社)p.18より。
引用した言葉は、同書でインクルーシブデザインを広めたロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートのヘレンハムリン・センター・フォー・デザインが提唱した言葉として紹介されている。