インクルーシブデザインが21世紀の社会を変える!?

写真に示した作品は、デザイナーであるライラ・カセムが障がい者施設に通い、知的障がいのある施設利用者の絵画的才能を引き出しながら、協働して商品のプロトタイプまで仕上げた事例で、こうした取り組みがインクルーシブデザインのひとつの典型的な取り組みといえる。

ライラ・カセムが手がけたインクルーシブデザインの事例。 デザイナーであるカセムと障がい者福祉施設の綾瀬ひまわり園のスタッフと知的障害をもつアーティストとともに開発したテキスタイル。

 

インクルーシブデザインに似たものに、ユニバーサルデザインがある。インクルーシブデザインはイギリス生まれだが、ユニバーサルデザインはアメリカ生まれで、万人のためのデザインという意味で、特別に障がい者用とか高年齢者用とか謳うことなく、可能な限り多くの人たちが平等に利用できる製品や空間づくりをめざすものだ。

たとえば、車椅子用などと呼ぶことなく階段の代わりにスロープをつけたり、わざわざ左利き用をつくるのでなく、右利きでも左利きでも使いやすいハサミをつくるという発想がユニバーサルデザインである。

インクルーシブデザインもユニバーサルデザインもそれが最終的にめざすところはより多くの人の積極的な社会参加だが、その手法は大きく違う。ユニバーサルデザインが「誰でも」という点に重きを置くのに対して、インクルーシブデザインは特別なユーザー、つまりリードユーザーやエクストリームユーザー(極端なユーザー)に重心を置く。

インクルーシブデザインの考え方においては、車椅子利用者や自閉症をもつ人、アフリカの最貧国のスラムに住む人たちがエクストリームユーザーである。彼ら・彼女らといっしょにデザインを考えることで、マスを指向するデザイン開発では見えてこないニーズが見えてくる。彼ら・彼女らの抱える問題を解決することが、先進的なニーズを掘り起こすきっかけになるのだ。

インクルーシブデザインは、エクストリームユーザーとの共創の仕組みをつくるデザインといっていい。ニッチ商品の開発と違うのは「エクストリームを理解することでメインストリームを変革できる」(※注)という大きな目標をもっていることである。経済的活動であると同時に社会活動なのだ。