二つの“記念”から学んだこと「地下の図書室」

この写真集は何度見ても飽きない不思議な魅力を持っています。すべて白黒のスナップ写真で構成され、写真暗部の黒くつぶれて荒れた粒子は写真にリアリティーを与えています。

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被写体は自然で申し分のない構図です。軽い感覚で撮られていますが、写真には重い空気が流れています。扉頁には出版社の蔵書印が大きく押されていました。ボクはその出版社に8年間勤務しました。一生その会社で働こうと決めていましたが、退職後のことは深く考えず、退職を決めてしまいました。

黒表紙の写真集は『THE AMERICANS』、写真家はロバート・フランク。40年代のアメリカ各地をスナップして歩いた記録をまとめた本です。ロバート・フランクはスイス人で、この写真集は1969年にアメリカで出版されました。

出版社に在籍当時のボクは、ロバート・フランクの名前を知りませんでした。80年代に写真集ブームに火がつき、彼の名前をよく見かけるようになりました。同タイトルの本は幾度か再版され、初版本は高額で取引されています。

図書室は出版社の地下にありました。いつもひんやりとしたカビ臭い図書室で、“記念”の本を探すために集中して写真集を見た、会社勤め最後の時間はとても貴重でした。そして気に入った写真集が評価の高い写真集だったことも自信につながりました。

出版社には謝罪し時効をお願いする次第です。

text:Yasushi Fujimoto

About Book

『THE AMERICANS』

ロバート・フランクの写真集。現在までに多くの出版社から数多くの再版が世界中で刊行され、表紙デザイン・サイズによって販売価格もさまざまである。