ビデオに描くという絵画の行為はなにをもたらすか?

「Calling(ドイツ編)」 アニメーション、ループ (7 分)、シングルチャンネル ビデオ、2009-2010 年

これがそのトレースされた光景だ。ドイツに10年も住んでいながら居場所を見いだせない思いがあった彼が街の風景あるいは日常の室内を精緻にトレースすることで関係を切り結ぼうとしていたのが「Calling(ドイツ編)」だという。

ドイツから日本に帰国した直後に遭った東日本大震災や自身や家族の病を経験して制作されたのが「Calling(日本編)」である。技術的な方法は同じだと思うが、作家の心境の変化がそこには見え隠れする。

「Calling(日本編)」 アニメーション、ループ (7 分)、シングルチャンネル ビデオ、2014 年

「Calling(日本編)」はニューヨークで開催された「Duality of Existence – Post Fukushima」展(2014年、Friedman Benda Gallery)に出品された。ドイツ編と違って、作家の視線は自身の内だけにとどまらず、外の世界に広がり、人の消えた街、見捨てられたかのような街の不安や孤独が現れている。

そして今回発表の最新作が《東京尾行》だ。

実写映像の一部をトレースし、一部だけがアニメーションになり、そのアニメーションがあるためにその下に実写の層が存在し、映像が虚実一体であることが明らかにされる。虚であるはずのアニメーション部分はときに実際よりもリアルに映り、そのことは我々が目にするものの虚実の曖昧さを問いかけている。

「東京尾行」 12 チャンネル ビデオ、2015-2016 年
「東京尾行」 12 チャンネル ビデオ、2015-2016 年

そもそもアニメーションの語源はラテン語で霊魂を意味するanima(アニマ)である。もともと生命のない動かないものに命を吹き込むというところからきている。

実写映像の一部をアニメーション化するとその部分が物語になる気がする。見過ごしてしまって当たり前の日常の風景が求められているかどうかにかかわらずなぜか雄弁になる。

展覧会では映像作品のほか平面作品も出品される。ここでも写真と絵画の中間的な構造で表現することで、複製の時代における作品のあり方を問うている。


作品の説明をする佐藤雅晴氏。記者内覧会にて。
1973年、大分県生まれ。
1999年、東京藝術大学大学院修士課程終了。
2000-2002年、国立デュッセルドルフクンストアカデミーに客員研究員として在籍。
2009年、「第12回岡本太郎現代芸術賞」で特別賞受賞。

展覧会情報:
ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴―東京尾行
会期:2016 年1月23日[土] ―5月8日[日]
会場:原美術館 ギャラリーI、II、他
ギャラリーIII、IV、V、他にて 「原美術館コレクション展:トレース」(ソフィ カル、森村泰昌、ベルント&ヒラ ベッヒャー、他)を併催
〒140-0001 東京都品川区北品川4-7-25
Tel 03-3445-0651
開館時間:11:00 – 17:00(祝日を除く水曜は20:00まで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日にあたる3月21日は開館)、3月22日
入館料:一般1,100円、大高生700円、小中生500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料/20名以上の団体は1人100円引
交通案内:JR「品川駅」高輪口より徒歩15分/タクシー5分/都営バス「反 96」系統「御殿山」停留所下車、
徒歩3分/京急線「北品川駅」より徒歩8分

 

さて、このコラム「Art Book Coffee」というタイトルをいただいている。美術展を紹介して、それにまつわる本の話をしようと思う。または、見てきた美術展についてカフェで語るように話をしたい。

ということで、今回は「佐藤雅晴―東京尾行」会場である原美術館のカフェ「Café d’Art(カフェ ダール)」のこと。もともと邸宅を改造した美術館のテラスカフェ。

営業時間:
11:00〜17:00(ラストオーダー16:30)
祝日を除く水曜のみ20:00まで(ラストオーダー19:30)
休業日:
月曜日(祝日の場合は営業し翌日休)
原美術館の休館期間
※カフェダールのご利用には原美術館への入館料が必要です。

 

Photos:ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴―東京尾行 , Yoshio Suzuki , Valentin Agapov/shutterstock