修行時代に懸命に身につけようとしたショコラの味

「料理好きだった母を10代で亡くし、知り合いの方に紹介していただいた洋菓子店『フランセ』の工場で働きだしたのがこの世界に入ったきっかけです。下積み時代は夜遅くまで働いても給料はわずかというシビアな生活でしたが、そんなとき精神的な支えとなったのは農機具の販売や修理で黙々と働く父の姿でした」

厳しい環境にも負けず、むしろそれを向上心や発想力というバネに変えた川口さん。その後、パリの『ラ・メゾン・デュ・ショコラ』での修行中にショコラティエになる転機を迎えた。

「修行中に食べたショコラが、自分にとっての忘れられないチョコレートですね。ショコラの奥深さに触れた初めての機会でもありますし、この技術を身につけたいと獅子奮闘したものです。ガナッシュの配分や分量を毎回メモして数値化したり、ボンボンショコラの24時間後と1週間後の固さを調べてカカオバターの比率を変えたり、試行錯誤していた時期です」

帰国後、ショコラに対する理解があまり進んでなかった日本で困難を乗り越えながら、培った技術とセンスを発揮。2003年には自身の店を自由が丘にオープンさせた。

「店を出す前にまずやりたかったのはカカオの産地に行くことでした。ベネズエラでは、15歳にも満たない子供たちの丁寧な作業を見て、彼らへの恩返しのためにもいいチョコレートを作ろう、と強く思いましたね」

原産地への敬意を込めて、最高の美味しさを求めて丁寧に黙々と作る川口さんのチョコレートは、口に含んだ瞬間に表情が輝く、そんな魔法がある。

 

About Shop

ORIGINES CACAO(オリジンーヌ・カカオ)

東京都目黒区緑が丘2-25-7 ラ・クール自由が丘 2F
tel:03-5731-5071
営業時間:10:30〜19:30(カフェ 18:30ラストオーダー)・月曜定休
http://www.originescacao.jp/

 

Photos:ORIGINES CACAO