リアルプライスのベーシックか夢の超高額モデルか、カルティエの新作時計2本

なにしろ機械式狂いなもので #2

時計業界の新年は、1月半ばのジュネーブで明ける。高級時計ブランドが、その年の主な新作をお披露目するSIHHの開幕である。SIHHは、“Salon International de la Haute Horlogerie Genève”の略称で、直訳すればジュネーブ国際高級時計サロン。日本の時計ファンにはジュネーブ・サロンとの別称でも知られる。

第26回目を迎えた今年の開催期間は、1月18日~22日。昨年までの16ブランドから《ラルフ ローレン》が抜け、代わりに個性豊かな9つの小アトリエ・メゾンが新たに加わり、計24ブランドの新作が披露された。

会場となるのは、ジュネーブ空港に隣接し、4月にはジュネーブ・モーターショーも開かれる大型のコンベンション施設“パレスポ”。その広々とした会場で、もっとも大きなスペースを占めているのが《カルティエ》だ。

パリを代表する高級ジュエラーであるカルティエは、1904年に製作した『サントス ウォッチ』によって本格的な腕時計の時代を開き、また『タンク』を筆頭に数々の名作時計を世に送り出し、時計史にもその名を刻む。スイスのフリブールには広大な時計専用のマニュファクチュール(工房)を構え、外装でも機構でも多彩なクリエーションをかなえるカルティエは、パリのジュエラーであると同時にウォッチメーカーでもあるのだ。時計の売上高もスイス屈指。だからカルティエの新作時計には、その年の全体の傾向が見て取れるケースが多い。

今年もそれに違わなかった。SIHH全体の新作時計を俯瞰すれば、機構的にシンプルでベーシックなリアル・プライスのモデルが多かったという印象が強い。一方でリッチな時計コレクターに向けた、新たな複雑機構を備える超高額モデルも目を引いた。