上野でボッティチェリを観る

サンドロボッティチェリ
サンドロ・ボッティチェリ《ラーマ家の東方三博士の礼拝》 Gabinetto Fotografico del Polo Museale Regionale della Toscana Su concessione del MiBACT. Divieto di ulteriori riproduzioni o duplicazioni con qualsiasi mezzo

画家たちにしばしば描かれるこのシーン。この話は「マタイの福音書」に出てくるのだが「東方の三博士」というのは何の博士かというと占星術の学者だ。記述には特に人数は書いてないのだが、彼らからの贈り物が黄金、乳香、没薬の3つだったので三博士とされた。絵画ではこの三博士はヨーロッパ、アジア、アフリカの3大陸を表したり(だから一人はしばしば黒人である)、あるいはそれぞれ青年、壮年、老人の代表として描かれる。

そういう西洋絵画のいわば定番的主題を用いたこの絵《ラーマ家の東方三博士の礼拝》。登場している人物にはそれぞれ実在した人物が当てられている。

諸説あるものの、老年の博士がメディチ家のフィレンツェ支配を確立したコジモ・ディ・メディチ、中央の赤いガウンの博士はコジモの長男ピエロ・ディ・メディチ、その隣の白衣の博士がコジモの次男ジョヴァンニ・ディ・メディチとするのが有力。

さらに画面左端の二人の男はピエロの長男でメディチ家最盛時の当主ロレンツォ・イル・マニーフィコとその弟ジュリアーノ・ディ・メディチだろう。そして画面右端、橙色のガウンをまといこちらを見ているのがこれを描いた画家サンドロ・ボッティチェリだ。

聖書の物語を権力者一族の人物に割り当てるという演劇的な構造になっている。

サンドロ・ボッティチェリ《聖母子(書物の聖母)》 ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館 (c) Milano, Museo Poldi Pezzoli, Foto Malcangi

聖母子像はたいへん愛されるテーマで多くの画家が思い思いのマリアを描いている。ただしそれは必ずしも微笑ましい母と子の肖像ではなく、やがて訪れる受難を予感する子とそれを憂える母の絵なのだ。

この《聖母子(書物の聖母)》もキリストは左手に金鍍金された3本の小さな釘を持ち、茨の冠を腕に通している。これらはいやでも後に彼の身に起こる受難、磔刑を思い起こさせる。

ちなみに絵の名の由来にもなっている書物には何が書いてあるかというと、処女による救世主の受胎と誕生を預言する旧約聖書の一書「イザヤ書」から2つのフレーズを引いているとのこと。

サンドロ・ボッティチェリ《美しきシモネッタの肖像》 丸紅株式会社 (c)Marubeni Corporation

美しい女性。彼女は前述の《ラーマ家の東方三博士の礼拝》にも登場しているというジュリアーノ・ディ・メディチの愛人だったシモネッタ・ヴェスプッチであろうと言われる。フィレンツェ一の美女と言われた彼女の美貌はのちにボッティチェッリが《ヴィーナス誕生》などを描くときに大いにインスピレーションを与えたのではないかと思えてくる。