『ダイ・ハード』のエンディングに流れるのは、ヴォーン・モンローのクリスマスソング『レット・イット・スノー』

当時、主演のブルース・ウィリスは1985~1989年のシビル・シェパード共演のABC制作コメディテレビドラマ『こちらブルームーン探偵社』で有名な程度の俳優だった。主演のニューヨーク市警のジョン・マクレーン警部は彼のものすごいアタリ役となり、その後1994年のクエンティン・タランティーノ監督作品『バルプ・フィクション』(原題Pulp Fiction)や1995年のテリー・ギリアム監督作品『12モンキーズ』(原題Twelve Monkeys)や1999年のM・ナイト・シャマラン監督作品『シックス・センス』(原題The Sixth Sense)などに出演。ハリウッドでの地位を確かなものにする。

原作は1979年に発表されたロデリック・ソープの小説『Nothing Lasts Forever』(1975年の映画『タワーリング・インフェルノ』を観た後、ビル内で銃を持った男に追い回される夢を見たのを元に書かれたもの)で、脚本はスティーヴン・E・デ・スーザとジョブ・スチュワート。アラン・リックマン演じる悪役ハンス・グルーバーのキャラが立っていて、アクション映画としてものすごく良く出来ている。

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ニューヨーク市警察のジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)は、別居中の妻ホリー(ボニー・ベデリア)に会うためロサンゼルスにやって来た。そしてホリーが勤めているナカトミ商事が手配したリムジンの陽気な運転手アーガイル(デヴロー・ホワイト)の運転で、同社のクリスマスパーティに向かう。

オフィスでホリーと再会したマクレーンだったが、2人は口論を交わしてしまう。突如そのパーティ会場のビルに、ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)とその部下たちが、重武装で乱入してくる。パーティの出席者全員が彼らの人質になるが、ひとりでホリーの事務室にいたマクレーンは発見されることなく脱出し難を逃れる。彼らの目的は、厳重なセキュリティにより保管されている「6億4千万ドルの無記名債券」だった。

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マクレーンはハンスらが占拠するフロアから脱出し、火災報知機を作動させるが、ハンス一味が報知器の誤作動だと通報したことによって、いったん出動した消防隊は引き返してしまう。次にマクレーンは一味の1人から奪った無線でロサンゼルス市警察に通報する。しかし、ロス市警はマクレーンが有線(電話)ではなくわざわざ無線を使って通報してきたことで、半分イタズラだと疑って取り合わない。

しかし無線発信源が報知機の誤作動を起こしたナカトミ・プラザだったことから、一応直近のパトロール警官に見回りを指令する。そこでマクレーンは、確認のためにナカトミ・プラザを訪れたアル・パウエル巡査部長(レジナルド・ヴェルジョンソン)のパトカーへ、倒した一味の死体を落として異常事態を知らせる。一味からの銃撃も受けたパウエル巡査部長は、市警本部に応援を要請する。

マクレーンを脅威とみなしたハンスは部下を動員して彼を探させるが、マクレーンはゲリラ戦術でハンスの部下たちを1人ずつ制圧していく。重大テロ事件と判断したロス市警は、SWATを派遣するが突入作戦は失敗し、FBIに現場指揮権を奪われる。ハンスはFBIに脱出用のヘリコプターを要求するが、彼には大きな目論見があった。

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マクレーンと交戦状態になったハンスは、マクレーンが裸足であることを利用して、ガラスを乱射して足を負傷させ、起爆装置を取り返す。FBIはテロリスト対策のため付近一帯を停電にするが、それによりセキュリティシステムの最終ロックが外れ、テロリストたちは金庫を開けることに成功してしまう。その後ハンスは、ホリー宅に突撃取材をしたリチャード・ソーンバーグ(ウィリアム・アザートン)のテレビ報道により、マクレーンとホリーが夫婦であることに気付き、マクレーンに投降を求める。

弟を殺された実働部隊リーダーのカールを、格闘戦の末にチェーンで首吊り状態にして倒したマクレーンは、彼らの狙いが、呼び寄せた逃走用ヘリコプターごと人質もろともビルを爆破して、混乱に乗じて逃走を試みようとしていることに気付き、屋上に急行して阻止する。

人質となっていたホリーを助けるため、ハンスらを追い詰めたマクレーンは、背中にガムテープで結びつけた拳銃により、受付係に扮していたエディを射殺するが、ハンスは即死に至らずホリーとともにビルの窓で宙吊りとなる。ホリーを助け上げようとするマクレーンを道連れにしようとするハンスだが、最期はマクレーンが、ハンスが掴んでいたホリーの腕時計を外したため単身ビルから落下して死亡する。

その後、ビルから出たマクレーンたちの前に、死亡したと思われたカールが、アサルトライフルを手にとって現れる。それを銃弾により止めたのは、過去に子供を誤射したトラウマにより銃を撃てなかったはずのパウエル巡査部長だった。大混乱を極めたLAに、ようやく穏やかなクリスマスが訪れるのであった。

『続・激突!カージャック』(原題Sugarland Express)の主演男優ウィリアム・アザートンを、小憎たらしいジャーナリストとして使うなど、配役が素晴らしい。

そしてこのエンディングに流れるのが、ヴォーン・モンローの1945年にリリースされたビッグバンドジャズ曲『レット・イット・スノー(雪を降らせましょう)』(原題Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!)なのだ。

このヴォーン・モンローは1911年生まれだから、1915年生まれのフランク・シナトラとほぼ同世代だ。「ラットパック」のシナトラ一家ではディーン・マーティンやフランク・シナトラが、この『レット・イット・スノー』を歌ってヒットさせている。ほかに、ビング・クロスビーもちゃっかりヒットさせている。

ヴォーン・モンローが『レット・イット・スノー』をヒットさせたのは1945年のこと。作詞サマー・カーン、作曲ジュール・スタイン。歌詞の内容は、雪が降り続くなか、男女が暖炉のある室内で時をすごしている様子が描かれる。ロサンゼルス在住の作詞家サミー・カーンは、雪のないロサンゼルスで雪が降るとを想像して書いたという。

舞台となっている超高層ビルは「ナカトミ・プラザ」という設定だった。実はこのビルは、ロサンゼルスの人工都市センチュリーシティにある20世紀フォックスの本社ビル、フォックス・プラザがモデルなのだ。

また、レニー・ハーリン監督の続編『ダイ・ハード2』(原題Die Hard2)ではクリスマスの雪のオマハ空港が舞台となり、エンディングにはこのヴォーン・モンローの『レット・イット・スノー』が流れる。つまり、このクリスマスソングが、『ダイ・ハード』シリーズのテーマ曲になっているのである。

このほか、金庫を開けるシーンで、ルドウィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章『歓喜の歌』が使われる。年末というと、ベートーヴェンの第九だが、この風潮は日本だけらしい。

年末になると、なぜ日本で第九が演奏されるのか? NHK『チコちゃんに叱られる』でやっていたが、楽団員のモチ代稼ぎというのが正直なところらしい。

画像提供:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
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動画:geRtTheDevil – YouTube