リシュモン ジャパン社長が語る『ラグジュアリー・ビジネスのこれから』

Q.例えば、「ルイ・ヴィトン」「シャネル」「グッチ」などのラグジュアリー・ブランドが、ワールドワイドで1兆円、あるいは1兆円近い年商になっているが、この規模になると「希少性」「憧れ」というラグジュアリー・ブランドの本質的な特性がすでに失われていると考えるが、どう考えているか?

A.リシュモン・グループのラグジュアリー・ビジネスは、時計とジュエリーがその中核になっており、他のラグジュアリー・コングロマリットであるLVMHやケリングなどとは、その考え方が同じではない。リシュモンはその未来が明るいとは思っていないが、悲観的でもない。ただラグジュアリーな時計やラグジュアリーなジュエリーに対するWANTSは依然として衰えていないことは事実だ。ダイヤモンドや貴石には埋蔵量に限度があるし、たとえば「ランゲ&ゾーネ」のような時計は現状では年間5000本しか生産できない。むしろこちらの方が心配だ。

Q.この20~30年のラグジュアリー・ブランドの成長は、特に中国の需要に支えられて来たが、中国の重要が一巡して、成長にブレーキがかかるのではないか、という識者がいるが? 次はインド? アフリカ?

A.次はインド市場だろうが、全然先の話だ。中国市場はまだまだ深耕できる。少なくとも、私が現役の間は大丈夫だろう(笑)。

Q.今年6月、時計二次流通のウオッチ・ファインダー社を100%買収したが、この狙いは?

A.リシュモンでは、時計の二次流通を少なくともマイナスだとは考えていない。乗用車の中古ビジネスのようになると考えている。中古車ビジネスとはいろいろな違いはあるだろうが、今、研究中だ。我々メーカーがこのビジネスに直接関与するのかしないのかが最大のポイントだ。先ほど述べた、「ランゲ&ゾーネ」の生産能力不足解消などにも有効かもしれない。一方ジュエリーについては、これとはちょっと考え方が異なる。とにかくダイヤモンド・貴石の埋蔵量が限られているというのがポイントになる。

Q.ブランド商品のシェアリングについてのスタンスは?

A.これもマイナスの存在ではない。ラグジュアリー・ブランドへの入門の役割を果たしてくれるし、購入への高揚感を育ててくれる存在と考えている。

Q.合成ダイヤについてはどう考えているか?

A.天然の石を扱う一点もののビジネスというのが我々のジュエリービジネスのスタンスだ。だから合成ダイヤは全く違う存在だと現時点では考えている。

Q.インターネットでラグジュアリー・ブランドを販売することについての基本姿勢は?

A.アメリカにおけるラグジュアリー・ブランドのインターネット販売比率は11%。これに対して商品全体の15%がインターネット販売だ。11%という数字は高いのか、低いのか、どうなのだろう。個人的には低くはないと思う。日本では、トップ・ラグジュアリー・ブランドに限れば、インターネット販売比率は、個人的な推測だが1%程度。何故、これほど低いのかについては明解な答えがない。しかし間違いなく今後早急に拡大していく。

Q.今後のリシュモンのラグジュアリー・ビジネスの課題は?

A.「ニュー・リテイル」という言葉でまとめられるが、(1)eコマース、(2)時計の二次流通ビジネスの確立、(3)コンビニ「カルチエ」に代表されるようなミレニアル世代へのラグジュアリー・ブランドの存在価値の訴求などが課題としてあげられる。いずれにしても、「パーソナライズ」「カスタマイゼーション」がキーワードで、顧客をマス化せずに、それぞれのWANTSにきめ細かく対応していくことが重要だ。例えば、eコマース環境の改善。パソコンのボタンを押せば、瞬時にその顧客にとって快適な売り場が眼前に広がり、瞬時に顧客好みの販売員が現れ、瞬時に顧客が欲しそうな商品が眼前にズラリと並べられる。今のAIの進化スピードならこういうヴァーチャルなeコマース環境は、3~5年で実現できるのではないかと思う。

三木 均(HITOSHI MIKI)
1961年生まれ。85年、同志社大学 法学部法律学科卒業後、樫山(現・オンワード樫山)へ入社。91年よりオンワード カシヤマ フランス駐在、94年よりフランス社長を務める。02年、リシュモン ジャパン株式会社 クロエ インターナショナルS.A日本駐在代表、03年よりクロエCEO。09年リシュモンF&Aジャパン株式会社(当時)代表取締役社長兼クロエCEO。日本市場においてクロエ及びシー バイ クロエの拡大・発展を成し遂げる。パリを拠点に全世界の営業部門のトップとしてコマーシャル戦略の指揮を執る。2013年7月、リシュモン ジャパン株式会社ヴァン クリーフ&アーベル ジャパン プレジデント&CEO。2015年10月よりリシュモン ジャパン株式会社 代表取締役社長 リージョナル チーフ エグゼクティブ オフィサー。