植物や庭園と深くかかわった現代アートを推進するショーモン城

企画そのものがユニークだなと思う点は、キューレーターが企画するすでに出来上がっている作品を展示する企画展とも違うし、また例えばどこか公的な場所に展示するための作品をアーティストに依頼するのとも違う。

広大な敷地(32ヘクタール)と歴史的建造物を有するドメーヌ・ドゥ・ショーモン・シュール・ロワールの特徴をうまく生かし、アーティストを招んで、そこで制作してもらい、展示し、そのうち買い取りするものもあるという実に魅力的な企画である。しかもなんらかのかたちで「庭」や「植物」に関連した「自然」をテーマとしたものになっている。

あまり普段見かけない植物もショーモンではよく選ばれていて、それらをミックスして植栽した場所もあり、微妙なカラーコーディネイトに思わず目が止まる。/Photo:Ayako Goto

ショーモン・シュール・ロワールで見た現代アートの展示を見ていこう。城館の近くには厩舎が建っている。厩舎は19世紀(1877年)に、ブロイ公夫妻の建築家ポール・ネスト・サンソンによって建てられた。そして馬具置き場にはメゾン・エルメスが製作した当時の最高級の馬具が並んでいて圧巻である。

こんな優美な歴史的コレクションが置かれた厩舎の庇(ひさし)の下には、クラウス・ピンター(Klaus Pinter)作の金色に輝く巨大な球体が展示されている。宇宙を表わしているようなこの作品は今年、2018年のインスタレーションである。金色の花のモティーフは、花の輝きによって明るく光り、天候や光線の具合によって変化する。

厩舎のひさしの下に据えられたクラウス・ピンター作の、花のモティーフが金色に輝く球体。/Photo:Eric SANDER pour le Domaine de Chaumont-sur-Loire

またロバ小屋には数千というタンポポの花が咲いていた。野原で摘んだタンポポがこれまで見たこともないようなシャンデリアになって展示されているのを見たときには思わず息を飲み、見入ってしまった。自然と人間の「手」が生み出したポエティックな作品である。作家はベトナム人の造形アーティスト、デュイ・アン・ナン・デュック(Duy Anh Nhan Duc)。

ショーモン城のロバ小屋の天井には無数のタンポポが繊細なパーツのような魅力をもったシャンデリアが。デュイ・アン・ナン・デュック作。/Photo:Eric SANDER pour le Domaine de Chaumont-sur-Loire

庭園の外れの方に行くとグアルー公園と呼ばれている場所がある。周りは白樺が植林され、場所を生かしたインスタレーションになっている。ここにニューヨークを拠点に活躍しているFujiko Nakaya(中谷 芙二子)の作品が置かれているというので行ってみた。が、最初は何も見当たらない。そう思って佇んでいると、装置のスイッチが入り、すると瞬く間に林がファンタジックな霧に包まれた。クリエーションは雲を表現した霧の彫刻だった。

グアルー公園の白樺林の近くに設置された中谷芙二子作の霧の彫刻。作者は雲の内面を見せること、肌の上に霧のしずくを感じさせることを意図したという。/Photo:Eric SANDER pour le Domaine de Chaumont-sur-Loire

ショーモンに行って知ったのは、「垂直庭園」(「植物の壁」とも呼ばれている)を創り出したパトリック・ブランとショーモンとの関係だった。植物が植えられた庭を地面ではなく、立てた状態にしてしまうという、それまでの常識を鮮やかに覆して、無味乾燥な都会にオアシスをもたらしたパトリック・ブラン。

パリのケ・ブランリー美術館(2006年開館)のファサードなどですっかり有名になったが、実はそれよりもずっと以前の1996年にショーモンで開催された庭をテーマにした展覧会で招待アーティストとして「垂直庭園」を発表しているのだ。この垂直庭園は今でもショーモンの厩舎の中庭で見ることができる。

パトリック・ブランはショーモン城の厩舎の中庭に、今度も「植物の壁」の新たな作品を作った。/Photo:Eric SANDER pour le Domaine de Chaumont-sur-Loire

これらのアート作品はドメーヌ(領地)のあちこちに設置されている。散策しながら、あらっと驚いたり、わぁーと思わず歓声をあげたりして、まさに驚きと発見と感動がもたらされるのである。

さらに感動を呼ぶのはアート作品のインスタレーションばかりではない。領地内のあちこちに植栽されている草花で、実に生き生きとしていて見事に咲いているのだ。しかも花の色あいに統一感とハーモニーがあり、その点がよその庭園と一線を画している。

白、ローズピンク、青。ショーモン城ではこの3色の花しか咲いていない。聞けばドメーヌ・ドゥ・ショーモン・シュール・ロワールのコミッショナー、シャンタル・コルー・デュモンさんの好きな色、こだわりの色なのだそう。

庭園を歩いていて、ふと立ち止まって視線を上にあげるとブルーの朝顔が。朝顔もやっぱりブルーが選ばれて。/Photo:Ayako Goto

これで納得! ショーモンの花がひときわ美しいのは、責任者の美意識の高さとそれを貫き通しているところから生まれる調和があるからなのである。

木陰に置かれた枝で作られたベンチ。この情景を一つとってみてもショーモンのセンスがうかがえる。/Photo:Ayako Goto

それにしてもこんなにも広大な敷地に、“自分の意思を美しく表現する人”って、どんな女性なのであろう。領地内で植栽されている草花は、全てコミッショナーが選んでいるという。草花を愛し、アートと庭園を結びつけ、高みを目指し、決して手を抜かない姿が浮かび上がってくる。

Photo:Ayako Goto, Eric SANDER pour le Domaine de Chaumont-sur-Loire