若者を惹きつける世界初の学問、『日本酒学~Sakeology』とは?

一般的に日本酒を学ぶというと、思いつくのは醸造学や農業であろう。しかしながら新潟大学が掲げる日本酒学は、学内にある10学部すべてが横断的に連携して日本酒を学ぶというかつてないスケールのものだ。その内容も、酒米、発酵、醸造、流通、経済、酒税はもちろん、日本酒のマナー、アルコールと脳、骨と酒粕など教育や医学分野まで多岐に渡る。

講師陣も多彩だ。学内教授陣だけではなく、他大学の教授や外部の専門家を含む学外講師による講義があり、成人対象のきき酒実習もカリキュラムに入っている。日本酒のみを対象にし、かつ醸造学を越えて広範囲に学ぶ拠点形成は世界でもはじめての試みとなる。

結果、初回の講義には当初予定していた200人定員に対して800名を超える応募が殺到し、急きょ定員を300名に増員。さらに『日本酒学』開講は学生だけではなく一般社会人からの関心も集め、市民講座や東京開催、ネット講座の開設などの要望が多数寄せられているという。“大学生の日本酒離れ”なんてどこ吹く風の快進撃である。

「日本酒学」が生まれた背景に目を向けてみよう。大学のある新潟と言えば酒処として有名だ。日本で一番多くの酒蔵があるだけではなく、新潟県醸造試験場(新潟県の組織)や新潟清酒学校(県酒造組合の組織)など、他県にはない研究機関があることでも知られる。そこに加えて今回、新潟大学で日本酒学開講である。いかにも新潟ならではの切り口だ。

実際、大学間競争が激化する中で多くの地方大学が地域資源や強みを対象にし、地域に根差した取り組みを増やしている。新潟大学も新潟清酒という地域資源があったからこそ日本酒学の芽があったことは言うまでもない。

しかし、この学問が目指すところは新潟の枠を越えて世界に広がる。つまり、「ローカルを掘り下げて得たものがグローバルなアピールになる。このふたつを兼ね備えているのが新潟の日本酒」(新潟大学経済学部・岸保行准教授)であり、『日本酒学』は多面的な日本酒の知識を得るだけではなく、国際的な情報発信や国際的な交流を通しての輸出拡大など、産業振興への貢献をも視野に入れている。

国際的な交流展開においてはボルドー大学との連携協定が決まっている。ボルドー大学にはワイン学(Enology)があり、國酒(フランスにおいてはワイン)の専門学部を有する点で先行している。来年には学生を派遣するとのことで、ワイン銘醸地との交流は実りの多いものになるに違いない。

世界的に日本酒の認知度が高まり輸出量が増える中、産声をあげた瞬間から国内外で高い注目を集めている『日本酒学』は、日本酒のイメージや価値をさらに発展させるだろう。そして、これから多くの日本酒研究家(Sakeologist)を輩出し、“日本酒の聖地”として日本酒の未来を輝かせてくれることを願う。

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