「ヴェルサーチ」が「ヴェルサーチェ」になった!!カタカナ表記は難しい?!

Photo:Akira Miura

アルファべット表記は、VERSACEだから、ヴェルサーチではなくて、たしかにヴェルサーチェが「原音」に近いことは確かである。しかし、日本に上陸してすでに40年にならんとしている今、慣れ親しまれたカタカナ・ブランド名を変えるとは一体その狙いは何なのか?

書面の中にはこう書かれている。「グローバルに展開するVERSACEメンバーとしてより一層の結束力を高め VERSACEファンを一人でも増やしていこうとする強い意志も込めております」。

ちょっと難解な文言である。私は、以下のように推測している。

「日本のジャーナリストは、『ヴェルサーチ』と不思議な発音をしているが、あれはなぜだ?」という本社サイドの疑問に、昨年日本現地法人社長に就任したばかりの今村氏が積極的に対応したのではないだろうか。つまりカタカナ表記に問題があるとして大英断を下し、商標登録からやり直してグローバルな一員としての結束力を示したということなのではないか。

今村社長、やる気満々ということなのだろう。先ほどの挨拶文の最後は「これまで以上にお客様に満足していただける品質の高い商品やサービスを提供して参ります。今後とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。 敬具」と結ばれている。「誤りがあった時は謙虚に認めすぐに改める」は成功のための不変の定石である。

我々ファッション・マスコミは、ブランドサイドがブランド表記をこうすると言ったら、それに従うまでである。変な意地を張っても始まらない。最近もイッセイ ミヤケ社から、インバウンドを中心に売れ続けているハンドバッグの通称「バオバオ」の表記について弊紙WWDジャパン宛にそのブランド表記がバラバラだが正確に、「バオ半角バオ半角イッセイ半角ミヤケ」にして欲しいとの指導的要望があったばかりである。

しかし、90年代に朝日新聞が独自にヴァ、ヴィ、ヴ、ヴェ、ヴォの使用をやめる動きを見せて、業界に激震が走ったことがあった。例えば「ルイ・ヴィトン」(Louis Vuitton)が「ルイ・ビトン」に、「ジャンニ ヴェルサーチ」(今はジャンニがとれて「ヴェルサーチ」)が「ジャンニ ベルサーチ」と朝日新聞だけは表記したのである。「さすが朝日」という声もあったが、ブランドサイドからクレームがあったのか、程なくファッション関係語彙だけは元に戻った(他は知らない)。

この他にも、「ルイ・ヴィトン」のアーティスティック・ディレクターが、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)から二コラ・ゲスキエール(Nicolas Ghesquiere)に代わるとき、二コラは自分の名前のカタカナ表記を変更した。従来ケリングの「バレンシアガ」のアーティスティック・ディレクター時代の「ゲスキエール」から「ジェスキエール」に変えたのである。この方が、「原音」に近いという理由だった。ある意味対抗するケリングのブランドからLVMHのブランドになったのを機に、旧弊を正したということなのだろうか。

やはり、リシュモングループの「クロエ」から、LVMHの「セリーヌ」に移籍した時に、デザイナーのフィービー・フィロ(Phoebe Philo)は、カタカナ表記をフィービー・ファイロに改めた。ファッション業界では「LVMHは、他のラグジュアリー・グループから移籍したデザイナーに関しては、カタカナ表記を見直す規定でもあるのだろうか」と噂されていたものである。

赤面の至りだが、今を時めく「バレンシアガ」のデザイナーのデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)が、「ヴェトモン」のデザイナーとして頭角を現したとき、我がWWDジャパンは、グルジア出身のデムナ・グヴァザリアと紹介した。さらに昔のことだから、恥を忍んで白状するが、今ではアナ・ウインター(Anna Wintour。より正確にはウインターではなくウイントゥアと表記すべきだというが)、アナ・スイ(Anna Sui)と表記しているのをそれぞれアンナ・ウインター、アンナ・スイとやっていた時期があった。ボストン大学を卒業した帰国子女が入社してすぐに、「あのう、アンナじゃなくてアナですよ(笑)」と指摘されたときのことを思い出すと今でも赤面する(笑)。

ついでにファッション関連のカタカナブランド表記で、中黒「・」が使用される例を紹介しておく。「ルイ・ヴイトン」「ボッテガ・ヴェネタ」「ジル・サンダー」などごくわずかだ。英字表記には中黒はなくて半角スペースだから、ちょっと違和感がある。なぜ中黒を使用したのかは不明である。氏名では姓と名の間には中黒が用いられるから、もちろん創業者はルイ・ヴィトンであり、ジル・サンダーである。WWDジャパンのように氏名とブランド名を区別するために、ブランド名には、「」をつけるとわかりやすい。

Photo:Akira Miura