Batshevaという名の究極にロマンティックなドレスとは?(後編)

ジューイッシュとして生まれ育ち、結婚してからは夫の志向も手伝って、よりオーソドックス(ユダヤ教正統派)に近いライフスタイルを送っている。シグニチャーである胸元がきっちり詰まったデザインで膝下丈スカートのドレスは、オーソドックスの女性たちの肌を見せない服装にも通じるものがある。

Photo:Akiko Ichikawa

とはいえ、禁欲的であるからこそのエロチシズムも感じられ、このドレスは意外にも幅広い解釈ができる。超ロマンティックだが、ゼイバースの野球帽にスニーカーといったストリート風味を加えたミスマッチなコーディネートを決めるクールなBatshevaガールズたちも続々出現している。

「 自分はずっと昔からこの格好をしてきたから、こんなに受け入れられていることにある意味驚いてもいるわ。たぶん、今、市場にはこんなドレスがなかったから新鮮なものとして受け止められている。もしも他の人がすでに作っていたら、私もそれを買えばいいだけのことで、自分では始めなかったと思うし」。

NYコレクションに参加するような“デザイナー”となった今でも、自分のドレスをクールなもの、としてデザインしているわけではない、という。

「本物のクールって、他と違う、とか面白いとか、変とかエキセントリックとか、なんでもいいんだけれど、人のことを気にしないで自分が好きな世界を極めることじゃないかしら。私がしてきた格好はこれまでクールじゃないと思われ続けてきたけど、これが私だし、変えられるものでもないから。

自分の名前もそう。昔はもっと女の子ぽい名前に憧れたものだけど、今では自分の服に全部名前がついていて、本当に誇りに思える」。

Photo:Akiko Ichikawa

VOGUE/CFDAアワードに応募する際に作ったポートフォリオは、Batshevaのドレス生地で表紙をくるんだ美しい本だ。母親のドローイングや夫が撮影した彼女のポートレート、アーミッシュやジューイッシュのコスチュームなども編まれている。

先日、メトロポリタン美術館のコスチュームインスティテュートがこの本を収蔵したいとリクエストしてきたそうだ。Batshevaは新しいブランドだが、その服にはアメリカの服飾史が、そして女性としての生き方が詰まっている。美術館の収蔵本になっても不思議はないだろう。

1年前にコレクションを見せてもらったときは、正直自分には可愛らしすぎて着こなせない気がしていた。でも、今、改めてコレクションを見せてもらい、私も着てみたいと、そう思い始めた。

モードとはある意味で度が過ぎること。その時代や社会環境の中で極まることでフレッシュにもなるし、また状況が変わればとたんに古臭くも見えてくる。Batshevaは時代を超えることができるのだろうか? しかし、彼女にとってはそんなことはきっと関係ないのだろう。私も、初めて彼女に出会った時にもらったゼイバースの野球帽はずっと大切にするし、いくつになってもかぶり続けたいと思っている。

究極にロマンティックなドレスに表現された人生(前編)

Name: バットシェヴァ・ヘイ
Occupation: ファッションデザイナー
Location: アッパーウェストサイド、マンハッタン
https://www.batsheva.com

Photographs by Akiko Ichikawa