世界ナンバーワンレストランの東京店『INUA』…その料理とは?

「ノーマ」はその後もシドニーとメキシコで同様のレストランを成功させたが、その間も東京では着々と第二弾が計画されていたのだ。しかも今度は常設。レゼピシェフの元で右腕として活躍したトーマス・フレベル氏をヘッドシェフに据え、「KADOKAWA」本社ビル9Fをレストランにリノベーションして6月 29日、オープンを果たした。

トーマス・フルベル氏。日本の北から南まで訪ね歩き素材を探しあてる素材マニア。生花を湯葉で巻くという発想がユニーク。/Photo:Muneaki Maeda

客席60に対してスタッフは約40名。営業は夜のみで、17:30~と20:00~の2回転(10月より)。コースは29,000円(13~14品)。税・サービス料別だが、飲み物のペアリング16,000円をオーダーすると一人約5万円というお値段。客層は食べることに強い興味を持つフーディたちを中心に。海外から3割、日本が7割といったところ。高額店ではあるが、フォーマルな高級店ではないのもいまどきのファインダイニングだ。

「INUA」内観/Photo:Jason Loucas

さて「ノーマ」の遺伝子をもつ、「イヌア」の料理とはどんなものか? 7、8月のメニューを見ると、ざっと、以下のような皿が連続する。

「沖縄のスナックパインとシトラス」、「皮ごと焼いた枝豆、ヤリイカのダシとロケットの花」、「味噌とバナナのクリスプパイ」、「赤いフルーツと蜜蝋のジュース」、「湯葉に包まれた野菜の花」、「熟成、燻製させた舞茸」、「丸茄子、かぼちゃの種と生クルミ」、「タラバガニと豆腐」、「海藻のピクルスとウニ」、「バナナの葉で包んで焼いたえのき、卵黄ソース」、「たきたてのゆめぴりかと蜂の子、ハマナスを添えて」。そしてデザートが、「豆乳、トウヒとさるなし」、「かぼちゃの種と黒麦麹の餅」。

「スナックパインとシトラス」や「赤いフルーツと蜜蝋のジュース」といったタイトル通り、色鮮やかな花やフルーツ、葉っぱ、そしてそこから採ったエキスなど特徴となる色や味、香りを抽出したエキスで構成される料理は「ノーマ」の得意なプレゼンテーション。

フルベル氏にとってはこの店がシェフとしてのデビュー戦だけに、枝豆、湯葉、えのきや舞茸など日本の素材をテーマにした皿に力が入る。生花を包んだ湯葉料理、舞茸を熟成させて、燻製にかけるという凝ったきのこ料理。ありそうでなかった日本の素材、技法の使い方に驚かされる。

さて、前回話題になった“蟻”はどうなる?と誰もが興味津々だったが、フレベルシェフはちゃんと“蜂の子”を選んだ。香ばしく煎った蜂の子と、半生の2種類を混ぜてご飯にのせて(これだけでも香ばしさが食欲をそそる)土鍋のふたを開けると、バラのような甘い香りが広がる。

蜂の子ご飯は、色彩が美しいだけでなく、香ばしい香りと甘くゴージャスなハマナスの花の香りに包まれウットリしてしまう。/Photo:Muneaki Maeda

「この花は?」「ハマナスの花です。バラ科の花で、お茶にもなります」。

こんなにいい香りがする花だとは知らなかった! これをご飯に合わせるとは驚き! ちなみに、誰もが気になる「で、おいしいの?」という疑問。こうしたイノベーティブ(ジャンルを超えた革新的料理)においては、旨味のポイントを外さず、その上でどれだけ新しい発見があるかが、料理に対する評価。「おいしい」の保証は、塩分を昆布出汁からとっているからで、これこそ日本料理のポイントをついている。

日本の素材、味、食文化は、日本人でなければ伝えることができないと思っていたが、フルベル氏の知識は日本人以上かもしれない。近い将来、「日本の素材をテーマに、あるいは技法をベースに、自国の食文化を表現したい」という、さらに進化した世界を表現する料理人も現われるだろう。その出発点が「イヌア」である可能性は十分に考えられる。

これから秋冬に向かって、メニューは少しずつ入れ替わっていく。現在2カ月先までほぼ毎日満席。ただ、キャンセルが出ることもあるので、電話で問い合わせれば、席が取れることもある。美食の扉は、そこに!

Photo:Muneaki Maeda
画像提供(3):INUA

■店舗情報

イヌア
東京都千代田区富士見2-13-12 KADOKAWA富士見ビル9F
17:30~2回転。日月休 inua.jp

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